五輪を盛り上げるイベントなのに、観衆はなし

聖火リレーが始まった後も混乱が続いている。

聖火リレーに関しては、沿道に多くの観客が集まることで、「密」な状態が生まれるとして、中止を検討する県もあった。実際に公道でのリレーを断念したり、規模を縮小する動きが広がった。特に、国が緊急事態宣言を全面解除するのに先立って解除した大阪府では、その後、「第4波」の感染拡大が発生。4月13日には1日の感染確認が初めて1000人を突破した。ちょうど同じ日に行われた聖火リレーは、公道での開催は中止。代替会場とした吹田市の万博記念公園内を観衆なしで走るという異例の対応となった。

写真=iStock.com/winhorse
※写真はイメージです

本来は、聖火リレーは大会に向けてムードを「盛り上げる」ためのイベントだが、新型コロナの蔓延防止を考えると「盛り上げる」ことができない、というジレンマに陥った。

「大会スポンサーの車両の音声の音量が大きすぎる」

そんな「盛り上げる」ための演出についても混乱が起きた。

4月7日と8日の2日間にわたって三重県で行われた聖火リレーについて、鈴木英敬知事が苦言を呈したのだ。7日に聖火リレーのセレモニーを行った際、大会スポンサーの車両の音声の音量が大きく、進行に支障をきたすほどだったとして、演出のあり方に疑問を述べたのだ。

鈴木知事は「感染状況がギリギリの中で県民に協力してもらいリレーを進めている。『盛り上げるぞ』という演出がすべて適切だったのか」「スポンサーの協力が不可欠なことは理解しているが、感染対策とリレーを両立させようという地域の気持ちに配慮してほしい」と記者団に述べたとNHKなどが報じた。

実は聖火リレーの「演出」を巡る報道でも、ネット上でちょっとした騒動が起きていた。3月25日に聖火リレーがスタートした際、東京新聞の原田遼記者がツイッターの個人アカウントで、南相馬市の県道でのリレーの様子を撮影した動画を公開。聖火ランナーの前を大音量の音楽をかけて走るスポンサーの宣伝車両を疑問視するツイートをした。さらに、東京新聞のウェブサイトでも「聖火リレー 大音量、マスクなしでDJ……福島の住民が憤ったスポンサーの『復興五輪』」という記事が動画付きで掲載された。このツイートや記事には、スポンサーや大会組織委員会を批判する書き込みが並んだという。

ところが、原田記者は3月28日にその記事や動画を削除する。その辺りの経緯については原田記者自身が東京新聞のサイトに率直に書かれているので、是非お読みいただきたい。