政府も大手電力会社も何もしてこなかった「不作為の罪」

電力自由化で大手電力の身動きがとれないなか、最後の手として政府内で浮上し始めたのが「原発国有化」だ。経団連なども原発の国有化には理解を示す。原発は大手電力各社にとって平時では大きな収益源となりうるがではあるが、一方で、事故やトラブルが生じた際は東電の例を挙げるまでもなく、一企業の手に負える代物ではない。

原発を国が一元管理して、そこからあがる収益を、安全対策などの費用に回したり、トラブルが起きても被害を最小限に抑えることができる新型小型炉に回したりするなど、大手電力会社から切り離すというやり方だ。原発を取り上げられた各電力は収益力が低下するが、そこは再編を通じて規模を拡大し、NTTをはじめとする新電力などに対抗するという絵だ。

東日本大震災の余震や、南海トラフ地震の発生もささやかれるなか、「第二の東電」がいつ生まれてもおかしくない。福島第一原発の事故から10年、政府も大手電力会社も何もしてこなかった「不作為の罪」は大きい。夏から本格化するエネルギー基本計画の見直しに向け、原発をどう位置づけるか。脱炭素を掲げる菅政権の大きな課題である。

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