「死にたい。遺書はもう書きました」とくに10代に多い希死念慮

「死にたい。遺書はもう書きました。楽になりたいです」

中学1年生の男子からの書き込みを見て、ボランティア相談員の高山奈々子(41)は、ためらわずに対応することに決めた。まず「今日は来て下さって、ありがとうございます」とキーボードに打ち込む。相手も初めてで不安だろうから、丁寧に寄り添う気持ちを伝えるためだ。

『プレジデントファミリー2021年春号』

「『死にたい』と書いてくる10代には、自分からは話したがらない子もいます。ですから慎重に、基本的な情報収集から始めます。まずは体調や睡眠状況、学校や家庭生活について順番に聞いていきます」(高山)

学校生活について尋ねていると、彼からこんな返事がきた。

「学校では、友達と話していると楽しいんですが、そのほかは空元気を出して頑張っている感じです」

率直な気持ちを聞けたので、高山は「友達と話すのは楽しいけど、それ以外は自然体ではいられないんですね?」と、相手の言葉を反復しながらも、彼の「空元気」を、「自然体ではいられない」と言い換えてみせた。傾聴での「受容」だ。彼の言葉をオウム返しにせず、あえて言い換えるのは、話をきちんと聞いていると伝えるためだ。

「死にたいと一人で思うと安心する」

家庭について聞くと、専業主婦の母親への辛辣しんらつな見方が明かされた。

「いつも不機嫌で、見張られている気がします。勉強でもなんでも僕をせかしてきます。たまに面白いことも言うんですけどね」

中1の彼が、現在のようにつらく感じるようになったのは、「中学受験への準備を始めた小学校5年生から」で、「学校でも家でもいつも緊張している」という。

高山は「学校でも家でも、常に周りに気を使われる、やさしい方なんでしょうね」と、今度は一歩踏み込んでみた。傾聴の「肯定」に当たる。

すると彼は、「やさしいかどうかはわかりませんが、周りにいつも気を使っているのは事実です」と回答。高山につらい自分のことを肯定してもらえたと思って気を許したのか、彼はこう書いた。

「自分の部屋で、死にたいと一人で思うと安心する」

高山はとっさに、「死にたいと思うと、安心するのはなぜですか? 緊張から解放されて気持ちが楽になる感じでしょうか?」と尋ねると、彼からは「おかしいですよね、でも、この気持ちは本当だってわかるんです。緊張の糸がほぐれる」と回答があった。

彼が明かした本音だった。高山が「学校でも家でも本当の自分を出せず、疲れてしまっている感じでしょうか」と書くと、「そうですね」と返ってきた。高山が説明する。

「学校でも家でも『いい子』でいようとしている分、自分の部屋に一人でいて、ふと『死にたい』と思うと、それが『自分の本当の気持ち』だと考えてしまいやすい。10代の相談者に多い『希死念慮』の考え方です。具体的な理由はないのに、漠然と死を願うこと。いじめや友人関係のトラブルなど、具体的な悩みから逃れたくて死にたいと思う、『自殺願望』とは違います」