仏壇の扉を開けた瞬時、この世とあの世がつながる

仏壇は最初、京都の熟練した職人のみが手がけることができた。金工、漆工、蒔絵など、工芸技術の粋を極めた京仏壇・京仏具は全国庶民の憧れの的であった。次第に地方都市でも製造が始まり、特に浄土真宗の勢力が強い富山の高岡地方や、漆塗りに適した気候の長野・飯山地方などで仏壇文化が華開いた。こうした地域では先祖供養に対する意識が高く、仏壇はより豪壮になる傾向にある。

金を使った厨子と仏像(撮影=鵜飼秀徳)

私も、お盆の時期には仏壇供養(「棚経」という)をしに檀家さんの家を一軒一軒回る。戦前の古い仏壇の技には目を見張るものがある。

だが、一つ屋根の下に3世代が同居し、隣近所の「見栄」もあって競うように立派な仏壇を買っていた時代は、バブル期まで。先述のように近年では核家族化・都市化が進み、都会のマンション家庭では仏壇を設置することを敬遠する傾向にある。今どきの新築分譲マンションで仏間を備える物件はほぼ皆無である。都市化と同時に家庭から、信仰や供養の機会が失われてきているのだ。

しかし、仏壇にはすごい機能が備わっているのだ。扉を開けると瞬時にチャネルがつながり、故人と対話することができる。それはこの世とあの世とをつなぐインターネットのようなものだ。否、ネットよりもはるかに味わい深く、有益なものだと信じたい。

先日、春のお彼岸が終わった。多くの日本人が、ご先祖様の供養とコロナ終息を願い、仏壇に向かって手を合わせたに違いない。

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