「コロナが心配」と検査を控え、手遅れになる人が激増する恐れ

そしてもう一つ心配しているのが、認知機能の低下です。「認知症パンデミック」ともいわれているように、外に出ない、人に会わない、歩かない生活が続くなかで、高齢者の認知機能はものすごく落ちています。

これらはすべて新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)という病気そのものが引き起こしたことというより、ステイホームを強いられたこと、「新型コロナは怖い!」と煽るマスコミが恐怖を植えつけたことなどによる人災です。

また、緊急事態宣言中には、緊急ではない内視鏡検査(いわゆる胃カメラ、大腸カメラ)は延期することになりました。鼻や口、あるいは肛門から管を入れて検査する胃カメラ、大腸カメラはコロナ感染のリスクがあるとされ、「緊急性のある場合のみ、実施するように」というお達しが学会から出されたのです。

そのため、緊急事態宣言中の約1カ月半の間、日本人に多い大腸がんや胃がんの早期発見のための検査はほとんど行われませんでした。実は検査だけではありません。がんの手術も、前年に比べて3~4割減りました。

これまでは年々右肩上がりで増えていたがんの手術数がガクッと減るとは、かなりの驚きです。日本人の死因の1位で、3人に1人ががんで亡くなっているなか、がんの検査も手術も減ったことによる余波はどうなるのか……。

がんの検査や手術だけでなく、緊急事態宣言中は健康診断や人間ドックも行われていませんでした。また、持病があったり、ちょっと気になる症状があったりしても「コロナが心配だから」と受診を控える人がいまだに多く、受診抑制や健診・検診抑制によって手遅れになる人が激増しているのではないかと心配しています。

「コロナ禍の9割は情報災害」だ

中国の武漢市を中心に新型コロナが発生したのが2019年12月、そして日本で初めての患者さんが確認されたのが2020年1月のこと。それから1年以上が過ぎた2021年3月中旬現在、8500人超の方が、新型コロナによって国内で亡くなっています。

「8500人も!」と思うでしょうか。

でも、毎年2万人が自殺で亡くなっています。糖尿病や高血圧といった生活習慣病を悪化させた先に起こる心臓病で亡くなる人は20万人を超え、脳卒中などの脳血管疾患は10万人を超えています。日本人の死因ナンバーワンのがんに至っては37万人です。

写真=iStock.com/dragana991
※写真はイメージです

そう考えると、コロナうつによって自殺が増えることや、「コロナが怖いから」と家に引きこもったり受診を抑制したりして生活習慣病を悪化させてしまうこと、がんの検査や手術が減って早期発見ができなくなってしまうことなどを背景にした“コロナ関連病”のほうが、100倍心配です。そう、「コロナ禍の9割は情報災害」です。

新型コロナについては、この半年でわかってきたことがたくさんあります。日本人にとってはそんなに怖い病気ではないこととか、どんな人が重症化しやすいのか、どんなところで感染しやすいのかといった、怖がるべきポイントもわかってきました。