新型コロナの発生から1年での累計死亡者数は約8500人。これは毎年2万人という自殺者数の半数以下だ。長尾クリニック院長の長尾和宏さんは「新型コロナより、自殺の増加や生活習慣病の悪化、がんの発見が遅れるなどのコロナ関連病のほうが100倍心配だ」という――。
※本稿は、長尾和宏『コロナ禍の9割は情報災害 withコロナを生き抜く36の知恵』(山と渓谷社)の一部を再編集したものです。
長引く自粛生活により日本中の生活習慣病が増えている現実
コロナ太りやコロナうつ、コロナ疲れ……といった言葉がささやかれるように、今、日本中で生活習慣病や心の病気が悪化しています。それは紛れもない事実です。
私のクリニックでも、しばらく顔を見ていなかった患者さんが、糖尿病や高血圧といった持病をずいぶん悪化させて来院されることが多々あります。
アルコール依存、ニコチン依存、ゲーム依存、スマホ依存といった依存症も増えています。コロナ禍で仕事を失い、昼間からお酒に手が出るようになって、アルコール依存症で歩けなくなり、在宅医療を受けることになった患者さんもいます。まだ40代のアルコール依存症の方を、在宅医療で診ることになるとは思ってもいませんでした。
また、年輩の方のフレイルも急速に進行しています。
フレイルとは、虚弱のこと。要介護、要支援の手前の状態です。「フレイルを予防して健康寿命を延ばそう!」と国も力を入れていましたが、残念ながらコロナ自粛で家にこもっているうちに、筋肉が落ちて、ヨボヨボになっていく人が増えているのです。
筋肉が落ちるのは、手足だけではありません。ステイホームで人に会う機会が減った上に、常にマスクをして口を動かさないので、口のまわりの筋肉も衰えがち。そのため、噛む・飲み込む・話す力が弱くなる「オーラルフレイル」も増えています。