不当廉売のケースはほかにも

財務省と経済産業省は調査が必要と判断し、供給者である韓国企業(UNID社)に質問状を送付するなどした。その結果、韓国UNID社の正常価格と輸出価格の差は平均して33.29%と算定された。わが国政府は、その差は大きいと判定している。本邦産業の収益への影響を見ると、2017年を基準とした場合、2018年の営業利益は減益、2019年には赤字に転落した。以上の内容は、財務省と経済産業省が公表した資料に記載されている。

それに基づいて、財務省は韓国産炭酸カリウムに対して、4カ月間、暫定的な不当廉売関税率(30.8%)を賦課する。なお、韓国のUNID社に関しては、わが国への水酸化カリウムでも不当廉売を行ったとの認定がなされている。水酸化カリウムに関しては、中国企業も不当廉売を行ったと認定されている。世界的に見て韓国企業の輸出が不当廉売にあたると認定されるケースは多いと指摘する経済の専門家もいる。

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生き残りに躍起な韓国企業

コロナショックを境に、利益が出る範囲で価格を引き下げて輸出の数量を増やし、その結果として国際市場におけるシェアを拡大させようとする韓国企業は増えているだろう。なぜなら、韓国国内では、人口の減少や雇用・所得環境の不安定化によって需要が縮小均衡に向かっているからだ。不動産価格の高騰や家計の債務残高の増加なども、内需にマイナスだ。

水酸化カリウムの不当廉売認定のケースを振り返ると、韓国企業が低価格での輸出を重視していることが確認できる。当初、わが国政府は2016年8月から5年間にわたって韓国と中国からの輸入に不当廉売関税を賦課すると決めた。2020年7月、カリ電解工業会は政府に課税期間の延長を申請した。申請に基づき政府は調査を開始すると公表している。

一連の業界団体と政府の取り組みが示唆することは、不当廉売関税の賦課にもかかわらず、韓国企業が低価格攻勢を維持・強化していることだ。

関税に応じる可能性は低い

突き詰めていえば、すでに機能、あるいは生産方法が確立されたモノの輸出に関して、価格引き下げは韓国企業が生き残りを目指す重要な手段の一つといえる。現時点で、政府が韓国産の炭酸カリウムにとった措置はあくまでも暫定だが、韓国企業がそれに応じるとは考えづらい。

むしろ各国政府が、韓国企業が不当廉売を行っていると認定するケースは増加する可能性がある。足許、世界経済は急速かつ大規模な環境変化の局面を迎えている。エネルギー分野では水素の活用を重視する国が増え、そのために脱炭素技術の開発が急がれている。また、半導体分野では、米国が自国の生産力の引き上げに加えて、台湾の半導体産業との協力体制を強めようとしている。