どうにも経営者が集まる会議になると、いまだに「最近の若者は我慢がたりない。すぐに辞めてしまう」という声を耳にすることが多くあります。
しかし、そんなことを言っていたら、ますます人は出ていってしまい、雇える人すら地元からいなくなります。変わるべきは企業側なのです。
生産年齢人口は、総人口よりハイスピードで減少していますから、「雇ってやる」から「雇わせていただく」という時代に変化していると捉えるしかありません。変わるべきは若者や女性ではなく、そもそも地域を構成する企業の経営者たちなのです。
地方に補助金より大切なのは「キャリア形成」
特に産業力が強い、地方で大手企業が集積する地域であっても、女性がどんどん流出する場合もあります。
典型的な地域が愛知県です。愛知県の多く地域は、女性の人口流出が激しく、2018年には年間1615人の20~24歳女性が東京圏に転出超過。都道県別での男性余りを示す男女性比が2019年にはワースト3位を記録しました。
この危機的状況を鑑みて愛知県が行った「若年女性の東京圏転出入に関する意識調査結果」によれば、キャリア形成に意欲がある女性は、結婚・出産後も働き続けるには地元を出るしか無いと考える人が多いことが明らかになっています。地元企業では未来が見えないと考えている方が多いことがうかがえます。
一方、地元に残る女性は結婚・出産するまで働ければ良いと考えている方が占めています。つまり、地元を離れるしかないと考える女性、地元に残ると考える女性の双方に、「キャリアアップ可能な仕事が地元にない」と判断されているのです。
そして、就職後の活躍の機会、仕事の内容待遇、職場環境などの多くの項目で上京した人のほうが満足度が高く出ています。それを見ている下の世代は、さらに機会を求めて外に出ていくという連鎖が生じているのです。
今の時代、自分の人生を豊かにしたいとキャリアアップを考えるのは当然です。それに対応できない企業が支持されず、地方からの人口流出が止まらない現状になっています。これは経営者側の問題です。
地方でも人が集まる企業の条件
2020年に内閣府は、女性の社会参画に関する「第5次男女共同参画基本計画」において、「地域に性差への偏見が根強く存在している」と指摘しています。
また、地方の人口減少が進む要因として若い女性の都市部への転入が多いとし、その背景には「企業経営者などの理解が足りず、やりがいが感じられない環境になっている」と指摘しています。
この答申自体に書かれても今更という感はありますが、地方における経営者たちの理解不足を挙げています。