結果は2020年、東京都人口は約8600人の増加。転入減少の中身をみても外国人の占める割合が多く、地方から東京への移動が減ったというのは限定的です。さらに東京から出ていった人たち半数は、行き先が埼玉、千葉、神奈川であり、東京圏で見た場合、約10万人の転入超過となりました。

実際問題、東京が何か悪いことをして地方から人を強奪しているわけではありません。東京と地方を比較した時に「魅力的ではない」部分が地方側に存在し、それを解決することがなければ、新たな成長を作り出すことは無理なのです。

こうした地方の解決は十分に可能なはずなのです。しかし地方の可能性すら信じていない方もいるのも事実です。

そもそも東京が悪くなって地方に人がくる、なんていう棚ぼた移住を期待するような人たちの地域に、どうして東京が嫌になったとしても行く人が出てくるでしょうか。

人が向かう地域は、確実に自らが動き変革を起こして、東京とは全く異なる軸で成長を実現しています。そういう地域はコロナ頼みの人口移動に期待はしていません。他人の没落を期待する前に、自分たちの改善と向き合うのが先であり、そちらのほうが確実にできる努力なのです。

「20代女性」に完全に見放されている地方の現実

そもそも地方からの人口流出は前述の通り、若者であり、女性です。より具体的に言えば、20~24歳の女性が地方に見切りをつけて、東京に向かっています。

2019年、20~24歳の男性の東京都への転入超過数は2万5512人。一方、女性は3万1685人となりました。最新の2020年統計をみても、2019年と比較すれば減少しているとはいえ、男性の20~24歳の転入超過数は2万2921人、女性は2万7418人です。女性優位は続き、流入超過数もあまり変わっていません。

東京タワーの見える東京の街
写真=iStock.com/Easyturn
※写真はイメージです

新型コロナウイルスの脅威よりも、地方で自分の人生のキャリアをスタートさせることへの不安のほうが大きいと判断している若者、特に女性が多くいるということです。

人口流出問題を取り上げるとすれば、この20~24歳の人たちの願いをどれだけ地方がかなえられるか、がテーマになるはずなのです。

しかし、実態はいまだに地方創生、人口の東京一極集中の是正という名目で、意味不明な箱モノを作ってみたり、観光企画や街路整備をやったりしているわけです。的外れにも程があります。

20~24歳の上京要因の多くは就職選択です。今後の人生のキャリアを形成していく上で、地方企業ではなく、在京企業を選択している背景にあるのは結局のところ、地方企業の女性雇用が全く魅力的ではないことです。