相手には相手の言い分がある

「反応を先送りにする」と「自分の感情を観察する」という2つのプロセスをたどると、あなたは「今、起こっていること」を冷静な目で見られるようになります。

その状態まで到達したら、次に考えたいのが「相手の真意を理解する」ことです。

あなたが目の前で起きている出来事を冷静に観察できるようになると、「相手は、この言葉で私に何を伝えようとしているんだろう」という、相手への好奇心が自然とわいてきます。例えば、先ほど例に挙げた状況でも「もしかしたら、部下には本当に言いたいことが別にあったのではないか?」といった、より深い洞察ができるようになるのです。

このように、相手の中で起きている事柄に目を向けることができれば、あなたの対応にも変化が生まれますし、相手との関係性も大きく変わるきっかけになります。相手の中で起きているであろう感情や思考、つまり「相手の真意」を想像し、真意を理解しようと努めることこそ、部下との関係性を深め、協働関係を作る基礎になるのです。

「自分の思い込み」で判断してしまわないことの大切さを、ご理解いただけましたでしょうか。自分の意見を押し通すことや、都合よく場を収めることではなく、「相手目線」で相手の真意を探っていくスタンスが大切です。

あなたにはあなたの感情や思考、主張があるように、部下にも部下の感情や思考、主張があります。それならば「部下の主張」にしっかり意識を向けて、相手の真意を探っていくのが大切だと私は思うのです。

再現ドラマをイメージできるか

これを意識するために私がおすすめしているのが、テレビでよくある再現ドラマをイメージすることです。例えば夫婦の会話の再現ドラマであれば、二人の間で起こった出来事を再現する、いわゆる「本編」の映像が流れる過程で、ときどき、ご主人の言い分や奥様の本音などのインタビューの「差し込み」が挿入されることがありますよね。

林健太郎『できる上司は会話が9割』(三笠書房)

こういった構成があることで、妻の本音、夫の本音が明らかにされ、見ている側は両者の言い分を俯瞰するように知ることができます。

これをあなたと部下との会話にも応用して、再現ドラマ仕立てにしてみるのはいかがでしょうか。例えば、「おっしゃる意味がわかりません」と部下が言ったとき、部下は何を感じていたのか? あなたがインタビュアーとなって部下にその質問をぶつけたら、部下はどう答えるか。あなたなら、どんな構成やセリフでその再現ドラマを創作するでしょうか。

部下が本当に伝えたかった「真意」を理解できれば、部下とのコミュニケーションに大きな変化を起こすことができますので、トライしてみることをおすすめします。

Answer:再現ドラマをイメージし、相手の内なる言い分に耳を傾ける
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