長期金利の上昇を警戒する向きもあるが…

また、世界経済の正常化期待は、米国を中心に長期、超長期の金利を上昇させている。2月24日までの月初来で、米10年金利は0.3ポイント、30年金利は0.4ポイント程度上昇した。わが国でも長期金利は上昇している。理論的に、金利上昇は株価にマイナスだ。そのため、長期金利の上昇が日米をはじめ世界的な株価を下落させるのではないかと警戒する投資家は少なくない。

しかし、今のところ、米国国債の利回り曲線(横軸に残存期間、縦軸に金利水準をとり、各期間と対応する金利水準の点を線でつないだグラフ)の急峻(スティープ)化は、株価を大きく下落させるには至っていない。むしろ、IT関連銘柄の高値警戒感から、売りが出た局面を押し目買いのチャンスと考える投資家は多い。

逆に言えば、世界の株式投資家の過半数は、目先は長期、超長期の金利上昇が株価下落の要因にはならないと考えているようだ。

物価動向の重要性が高まっている

少し長めの目線で考えると、米国の物価は上昇し、金利は一段と上昇する可能性がある。その時の状況にもよるが、さらなる金利上昇は株価の下落要因となり得る。重要なのは、どの程度の期間(ターム)で、中央銀行が目指す物価水準が達成されるかだ。

現在の米FRB(連邦準備理事会)の金融政策にもとづくと、いつ、どの程度のスピードで2.5%程度の物価上昇率が実現するかが重要だ。年前半と後半以降に分けて、その点を考えてみたい。

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まず、2021年前半の米国経済を考える。4月から6月にかけて、FRBが物価動向を評価する指標として重視する“コア個人消費支出(PCE)の価格指数”の変化率が、前年同月比で2%を上回る可能性はある。その要因として、2020年4~6月期、コロナショックによる需要の落ち込みからコアPCE価格指数の伸び率は鈍化した。

その分、本年の4月以降の物価上昇率は上振れやすい。ワクチン接種の進行や、バイデン政権の追加経済対策も物価を上昇させる一因だ。