結局、クラウンは冒険しなかった

平塚氏は、付き合いのあるトヨタディーラーに「ずっと憧れていたから」とクラウンを所望したところ、「クラウンは中古の価値がないから」などと止められて、結局カムリを購入したという。「2年後にカムリWSに乗り換えたら高査定にびっくり。ディーラーからすれば、査定額の低いクラウンを買わせてしまうと買い替えを提案できなくなるのが怖いんです」。

結局、最後までネックとなったのはFRの呪縛だった、と平塚氏は言う。

「フレーム構造のFR、直6エンジン、幅1800mmの立体駐車場に入る日本向け高級セダン……これ一式すべてが時代に合わなくなった。幅1800mm以内のセダンなら、静かで壊れず、しかも高査定のプリウスがありますし。今、買い手は高級セダンには質実剛健なんかじゃなくて、前述のような最新技術を求めています。耐久性は技術で担保できている。結局、クラウンは冒険しなかった。古い呪縛が最新技術に負けたんです」

20年11月に“終わり”が報じられて以降、郷愁まじりでクラウンを惜しむ声もきかれる。「クラウンはFR」という固定観念からは自由になれなかったのか。昭和から今に至るクラウンというブランドの存在感を思えば、もったいないとだれしもが思うだろう。

すでにフラッグシップではなくなっていた

「ただ、1989年の高級セダン・セルシオ発売の段階で、クラウンはトヨタの個人向けの最上モデルではなくなっていました。(06年にレクサスブランドに移行した)セルシオは本当に素晴らしい車でした。もしクラウンがフラッグシップであれば、近年の自動運転もいち早く導入するはず。でも、実際に導入されたのはレクサス。クラウンはFRでありながら、すでにフラッグシップの高級車ではなくなっていたんです」

それでも、トヨタ販売店の底力でクラウンはどうにか売れ続けたが、20年5月より全国のトヨタ販売店において全車種全店扱いとなり、アルファード、ヴェルファイアらと同列で売られるに至り、ついに「まったく売れなくなった」という。

FRにこだわって、新しい顧客のニーズの変化についていけなかったとあらば、消えてゆくのも致し方なしということか。昭和のクラウンの輝かしさを知る世代にとっては、誠に寂しい話ではある。

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