個人客はドイツ車に、法人顧客はアルファード・ヴェルファイアに

実は、クラウンは2003年末に市場投入された「ゼロクラウン」によって、一度はこうしたイメージを刷新している。

「ゼロクラウンは、頑固に続けていたフレーム構造から、モノコック構造の最新型の車に生まれ変わりました。セダンの中でも異彩を放つ下取りの良さと、小幅な立体駐車場にも入る1800mm以内の横幅がいい」

モノコック構造に変えて車内が格段に広くなったことで、客先を乗せるための広さを重視する法人顧客に大きな人気を呼び、ゼロクラウン投入後の2004年度の新車販売台数は前年度比28%増の10万391台となった。

しかし、翌2005年度は7万7241台と再び下落。以降は下落傾向が止まらず、2010年度には3万6419台まで落ち込んだ。

「FRはやはりそのまま。そこへ同じトヨタのラージミニバン、アルファード(2002年発売)とヴェルファイア(2008年発売)がサスペンションの構造を変えて乗り心地を向上させたんです。そもそも、ラージミニバンの室内はセダンよりも圧倒的に広いので、法人顧客はクラウンからこの2つに流れ出しました」

“いつかはクラウン”が、“さよならクラウン”に

それならば……と2018年に販売を開始した現行のクラウンには、一気に最新技術を詰め込んだのだが、それゆえに先代クラウンより価格が上がってしまった。しかも、北米市場で最も売れていながら国内ではイマイチだった前出のカムリの存在感が増してきたのが大きかった。

「カムリの完成度が、すさまじく上がってきました。もともと価格もリーズナブルだから、海外での販売台数が爆上がりし、中古車の人気も上昇。その結果、5年後の下取り予想価格がクラウンに匹敵する水準に上がってきたんです。見た目のエンジンスペックは同等、室内はFFのカムリが圧倒的に広い。なのに新車の価格はクラウンのほうが圧倒的に高い。とあれば、結果は自明です」

個人客は最新技術と値引き攻勢のドイツ勢に取られ、法人顧客はアルファードやヴェルファイアに奪われ、さらにカムリの急激な追い上げ……全方位を固められた現行のクラウンの販売台数は、先代の3分の1程度にまで落ちてしまった。

「あっという間でした。先代はまだ価格がリーズナブルだったのに……。そもそもカムリのように海外でも売れる世界戦略車でなければ、開発費も出ません。どこまでも日本向けに作られたクラウンは、国内とは対照的に海外では無名に近い。“いつかはクラウン”が、“さよならクラウン”となってしまった。トヨタのセダンは、カムリの一択になった感があります」