ミャンマー国軍は「中国の支持が得られる」と考えたはず

中国は欧米流の民主主義が香港で台頭するのを嫌い、傀儡の香港政府を使って抗議デモを取り締まり、民主派の運動家を徹底的に弾圧した。

しかし、香港と違いミャンマーは独立したひとつの国家である。そう簡単には懐柔できない。自らの支配下に置けない。

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そこで民主派の旗振り役であるスー・チー氏に対し、内政不干渉の立場を示して経済協力を続け、ミャンマーに浸透しながら時間を稼いできた。それだけミャンマーは中国にとって重要な国なのである。

クーデターで中国にとって好機が訪れた。目障りなスー・チー氏は軟禁され、武器の輸出でつながってきたミャンマー国軍が実権を握った。国軍が政権転覆を実行できたのも、国軍の幹部らが習近平政権の支持が得られると考えたからだろう。したたかな習近平・国家主席は、クーデターをきっかけに国軍をさらに手なずけ、ミャンマー利権を確実なものにしようと、画策しているはずだ。

ミャンマールートは最も成功した「一帯一路」だ

なぜ中国にとってミャンマーは重要な国なのか。

ミャンマーは中国の雲南省などに接し、中国側から見ると、インドシナ半島を経由してインド洋に出るルート上に位置している。逆にインド洋から中国にも入りやすい。有事の際、マレー半島とスマトラ島の間にある太平洋とインド洋を結ぶ、マラッカ海峡をアメリカに封鎖されるのを恐れてきた中国にとって重要なポイントがミャンマーだった。ミャンマールートを使えば、問題のマラッカ海峡を通らずに中東から原油や天然ガスをタンカーで運ぶことができ、エネルギーの供給もスムーズになる。

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このため中国は、軍事政権時代の1980年代から原油・天然ガスのパイプラインの建設を押し進め、ミャンマー西部から中国の雲南省まで原油を送るパイプと、ミャンマー沿海で採掘された天然ガスを送るパイプを配置し、数年前から本格的に輸送がスタートした。

エネルギー供給のカギを握るだけに、ミャンマールートは中国が掲げる「一帯一路」の構想の中で最も成功したものとなった。

しかし、ミャンマーを中国の思い通りにさせてはならない。日本の尖閣列島の周辺海域への海洋進出や南シナ海の軍事要塞化など、中国の拡張は目に余る。日本をはじめとする国際社会は、輸出入の制限などミャンマー国軍政権に制裁を科し、スー・チー氏が政権を奪還して再び民主化が進むよう、強く働きかけるべきである。国際社会の正当な行動が中国を牽制し、その動きを止めることになる。