20GB2980円は「公定価格」のようなもの

結局、ソフトバンクもKDDIもこれに追随する。ソフトバンクは12月22日に「SoftBank on LINE」をブランドコンセプトに月額2980円のプランを発表。KDDI(au)も1月13日に新料金プラン「povo(ポヴォ)」を、大手携帯電話会社で「最安値」の20GBで月額2480円(税別)と発表した。

だが、これには通話料金が含まれておらず、月500円で5分以内の国内通話無料サービスを追加できる仕組みだった。同じ条件で比べると3社横並びの結果になった。

ちなみに「最安値」とKDDIが発表したことについても武田総務相から「非常に紛らわしい」と文句を付けられている。いわば2980円が公定価格として政府に示されたようなものだった。携帯電話料金値下げという「成果」を何としても国民に示したい菅首相の執念だったと言ってもいいだろう。

総務省統計局の「家計調査結果」を見ると、2人以上の世帯の家計消費支出のうち「通信」の占める割合は4.6%に達し、家計にとって大きな出費であることは間違いない。しかも2011年の月平均の1万1928円から2019年の1万3591円まで8年連続で増え続けているのだ。年間にすれば16万3092円。仮に6割下げることができれば9万7855円浮く計算になる。

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楽天モバイルは大手3社の「草刈り場」になる

特に新型コロナウイルスの蔓延で経済活動が凍りつき、雇い止めや失業で収入が減っている人にとっては、必需品の携帯電話の料金負担が減ることは大きい意味を持つ。人気が急落している菅首相にとっても、目に見える「結果」を出せれば支持率挽回の大きな材料になるだろう。それだけに、大手携帯会社に値下げさせることに必死になっていると見ることもできる。

だが、こうした強引な「官製値下げ」は必ずどこかにしわ寄せがいく。

おそらく最も経営体力が弱いところが打撃を受けることになるだろう。大手3社の格安料金プランが2980円の横並びになったことで、大手間のユーザーの大移動が起こる可能性は低くなった。同じ通信会社間でのプランの変更は起きても他に乗り換えるケースは多くないとみられる。新規参入したばかりの楽天モバイルも値下げに踏み切らざるを得なくなった。

楽天モバイルは昨年4月から1年間の無料キャンペーンを行って、220万人余りが利用している。その無料キャンペーンが終わって、本来ならば毎月2980円を課金されるユーザーが増えてくるはずだった。つまり、大手3社の新プランと同額になるのだ。

だが楽天モバイルはまだまだ通信設備の建設途上で、通信品質に差がある。当初、自社エリア内は月額2980円で使い放題というプランだったが、同じ金額ならば通信エリアが整ったNTTドコモのahamoにしようといった利用者が増えることが予想された。楽天モバイルの220万人は大手3社の草刈り場になってしまう。