「カーボンニュートラル」を盛り込んだ経営目標を発表

工場作業員で入社し、生粋のGMチルドレンとして2014年にGM初の女性CEOに就任して以来、バーラCEOは北米での生産体制の見直しのほか、欧州、インドからの事業撤退などリストラに大なたを振るってきた。

写真提供=GM
2021年後半に発売予定の「GMC HUMMER EV Edition 1」。大型四駆車ハマーのEVで、推定1000馬力を誇るという。

これまでの経営改革に比して今回のEVシフトは、完全な攻めの姿勢への転換であり、株式市場もこれを好感した証左がこの株価最高値更新だ。

タイミング的には気候変動への取り組みを看板政策に掲げるバイデン米政権の発足が、「変わるGM」には追い風となる。実際、バイデン大統領は1月27日、「将来のクリーンエネルギーで米国は世界をリードする」と演説し、温暖化ガスの排出削減を目指す大統領令に署名した。

バイデン新政権の政策は、トランプ前政権からは180度の政策転換で、GMは翌1月28日には2035年までに乗用車を全面的に電動化し、2040年までに全世界の事業と製品で温暖化ガスの排出量を実質ゼロとする「カーボンニュートラル」を盛り込んだ経営目標を発表した。

これに呼応するようにバーラCEOは、「環境に優しい世界を実現するため、世界の政府と企業の取り組みに参加する」と表明した。

世界第4位の新会社ステランティスも「脱炭素」へ

既存の自動車産業を巡る大きな動きとしては、2021年1月に欧米大手のフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)とフランス大手のグループPSA(旧プジョー・シトロエングループ)が合併し、世界第4位の新会社「ステランティス」が発足した。

脱炭素シフトはステランティスも同じで、カルロス・タバレスCEOは正式発足した1月19日のオンラインでの記者会見で、アップルやITなどハイテク企業とEVで協力する用意があると表明した。

合併は脱炭素や自動運転技術で巨額投資が避けられない状況下で相乗効果を引き出す狙いだっただけに、異業種との連携も視野に入れる。

欧州ではすでに二酸化炭素(CO2)の排出規制が強化され、基準をクリアしなければその自動車メーカーに罰金が科せられる。さらに英国は2030年、フランスが2040年にそれぞれガソリンエンジン車の販売を禁止し、「脱炭素」に大きく舵を切る。それだけに欧州市場を主戦場とするステランティスは「脱炭素」に前のめりにならざるを得ない。