GMトップは「すべてのクルマを電動化で牽引する」と宣言

世界の自動車大手がなりふり構わず「脱炭素」に取り組み出した。「脱炭素」の切り札とされる電気自動車(EV)は米テスラが先導し、米アップルの本格参入も現実味を帯びてきた。過去の経験則が通用しないディスラプション(創造的破壊)は、100年超の歴史を抱え、確固たる産業構造を築いてきた「オールドスクール」の既存自動車大手を脅かし、事業存続を賭けた命がけの選択を迫る。

米ゼネラル・モーターズ(GM)の新しいロゴ(右側)。電気プラグをイメージしている。ロゴを変更するのは60年ぶり
写真提供=GM
米ゼネラル・モーターズ(GM)の新しいロゴ(右側)。電気プラグをイメージしている。ロゴを変更するのは60年ぶり

かつて世界最大手として他の追随を許さなかった米ゼネラル・モーターズ(GM)が「脱炭素」への大胆な“行動変容”を見せている。例年1月半ばに米ネバダ州ラスベガスで大々的に開かれる世界最大のデジタル技術見本市「CES」は今年、コロナ禍の中で初のオンライン開催を余儀なくされた。

そんな異例の開催の中、GMは一躍注目の的となった。メアリー・バーラ最高経営責任者(CEO)が1月12日の基調講演で「すべてのクルマを電動化で牽引する」と大見えを切り、複数ブランドでEVのコンセプトカーを披露したからだ。

新ロゴに電気プラグをイメージしたGMの本気度

GMはEVと自動運転に270億ドル(約2兆8000億円)を投じ、2025年末までに高級車から商用車、さらに米大手が文字通り“ドル箱”とする「ガソリンがぶ飲み」のピックアップトラックに至る30車種のEVを発売する方針を公表しており、その本気度をCESで示した。

実際、商用EVは完全子会社「ブライト・ドロップ」を通じ、2021年後半に商用バン「EV600」を投入し、米物流大手フェデックスに供給する。本気度という点ではCESの直前1月8日には57年ぶりに「GM」のブランドロゴをEVに不可欠な電気プラグをイメージしたデザインに刷新した。

GMが2021年後半に投入予定の商用バン「EV600」。最初の顧客は、米物流大手フェデックスとなる。
写真提供=GM
GMが2021年後半に投入予定の商用バン「EV600」。最初の顧客は、米物流大手フェデックスとなる。

これを受けて、1月12日の米国株式市場でGM株は終値で47.82ドルを付け、経営破綻後の再建から2010年11月に新規株式公開(IPO)で再上場(当時の株価は33ドル)して以来の最高値を更新した。

「100年に一度の変革期」を乗り越えなければならない既存の自動車産業にとって電動化と並ぶキーワードとなる自動運転技術も、GMは1月19日、自動運転車を担う子会社「クルーズ」への米IT大手マイクロソフトの出資を得て、資本・業務提携し、来たるディスラプションへの備えを矢継ぎ早に打ち出した。