日本限定の軽自動車や商用車はコスト面でEV化が難しい

日産自動車は1月27日、日本、中国、米国、欧州で販売する新型車を2030年代早期にすべて電動車両にすると発表した。マツダは翌28日に初の量産型EV「MX-30」を国内向けに発売した。

マツダはが1月28日に発売した「MX-30 EVモデル」
写真提供=マツダ
マツダはが1月28日に発売した「MX-30 EVモデル」

日本勢はトヨタ自動車が脱炭素に燃料電池車(FCV)を含む「全方位型」で対応し、2025年頃までに新車販売の約半数を電動車とするなど、世界の潮流に負けてはいない。

ただ、日本の固有規格である軽自動車のほか商用車はコスト面でEV化は難しく、「脱炭素」に向けた課題は多い。そんな中で事業存続をかけた開発を迫られる。

一方で、EV専業のテスラは2020年12月通期決算で最終損益が2010年の株式上場以来初の黒字を計上し、世界販売台数は49万9647台と前年から36%伸ばした。8190億ドル(1月27日終値換算)の時価総額は世界販売トップのトヨタの約3.5倍で、世界に居並ぶ自動車大手を抑え、EVはおろか世界の自動車産業で圧倒的な存在感を示す。

強気のテスラは2022年までに倍増の年間100万台へ

テスラのイーロン・マスクCEOは2022年までに倍増の年間100万台の販売見通しを示し、強気の姿勢は崩さない。まさに自動車産業のオールドスクールを切り崩す新興勢の先頭に立つ勢いだ。

しかし、テスラも現地生産する中国で新興の地場EVメーカーの攻勢を受け、世界最大の自動車王国となった中国で先行者利益を必ずしも享受できるとは限らない。新興EVメーカーの蔚来汽車(NIO)、小鵬汽車、理想汽車は米市場で米国預託証券(ADR)が取引されるなど資金調達力があり、政府機関の支援もあってすでに複数モデルを投入し、勢いを増している。

テスラが2021年1月に発売した中国の上海工場で生産するスポーツ用多目的車(SUV)「モデルY」とセダン「モデル3」の価格を、発売前に公表していた暫定価格を大幅に引き下げたのも、価格の低い地場EVメーカーの追い上げを意識したからにほかならない。

さらに「アップルカー」での参入がまことしやかにささやかれるアップルや自動運転を含め、参入をうかがうハイテク企業の存在も無視できない。

中国でもインターネット検索最大手の百度(バイドゥ)が1月11日、自動運転技術を搭載したEVの製造販売に向けて、中国の民営自動車最大手の浙江吉利控股集団と提携すると発表した。投入時期は明らかにしていないものの、百度は吉利も出資するEV新会社を設立し、EV市場に参入する計画で、テスラの地位は決して安泰とはいえない。

電動化に大きく切り替わる、新旧入り乱れての自動車産業の新時代は始まったばかり。迫りくるディスラプションにオールドスクールは全方位的に死に物狂いの対応を迫られる。

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