味だけでなく形状にもこだわりが
ところで同社のお茶づけは、どんな原料から構成されているのだろう。
「レギュラータイプのお茶づけは、緑色の粒状の『調味玉、海苔、あられ』が基本の構成となっています。さけ、梅干など具材が入っているものについては、上記の3つにプラスしてフリーズドライの具材が入っています。調味玉の中には抹茶が原材料として使われていることから、当社のお茶づけは、お湯をかけて召し上がっていただくことをお勧めしております」(石井氏)
商品の袋の裏側には「永谷園流おいしい食べ方」として、「お湯は、できるだけ熱いものを、たっぷりと。」とイラストつきで紹介されている。
お茶づけ海苔と、さけや梅干では、あられの形も違う。
「あられの形状が違うのは、具材は入っているか、入っていないかの違いです。お茶づけ海苔については、あられも重要な具材であることから松の葉に似た『松葉あられ』を、他のものに関しては、具材と協調できるように『ぶぶあられ』を使用しています」
前述したふりかけでは「一時卒業する人も多い」そうだ。
「子ども時代に親しんでいた人も進学や就職でひとり暮らしを始めると、ふりかけを買わなくなる傾向にある。お母さんも、子どものお弁当をつくるのは高校時代までが多い。そうしたライフステージの変化で、一時的にふりかけから卒業する消費者が増えます。結婚して家庭を持ち、子どもができると、再び常備するようになります」(食品メーカー)と聞いた。
ふりかけに比べると、お茶漬けは一時離脱者が少ないようだ。
なぜお茶漬けは、ふと食べたくなるのか
「お茶漬けを食べようかな」と思うのはどんな時だろう。永谷園に問い合わせたところそうした調査結果がなかったので、編集部と一緒にそれぞれの経験も含めて考えてみた。
・軽くすませたい
・デリバリーは味が濃い
・こってりした総菜に飽きた
・小腹がすいた
・二日酔い
今のコロナ禍ではできないが、仕事柄、連日会食続きの大手企業の経営者が「たまには外食ではなく、家でお茶漬けを食べたい」と本音をもらすのを聞いたことがある。
多くの人がこれらに近い「喫食目的」ではないだろうか。
永谷園のテレビCMは、登場する著名人が食べた後「あぁ~」と一息つくシーンが多い。これは長年のこだわりなのかと思ったが、「お茶づけが持つ『ホッとする』『安心する』おいしさを素直に表現している」のだそうだ。
同社の商品はお茶づけに限らず、「和」のイメージが強い。大相撲の土俵を回る懸賞旗でもおなじみだ。2000年の5月場所より掲出しており、無観客の場所でも続けている。
グローバルや多様性が尊重される時代とはいえ、お茶漬けに手を伸ばす時、日本人としてのDNA(遺伝子)を思い起こすのかもしれない。