「手軽で時短」朝食にお茶づけを訴求
もちろん、受け身の姿勢ではなく、メーカーとしての訴求も続ける。
昨年8月、永谷園は子どもの朝ごはんとして「めざまし茶づけ」の提案を始めた。
「小学生のお子さんの朝ごはんに、手軽で短い時間で食べられるお茶づけを推奨する企画です。きちんと朝食を食べることで、朝から3つのスイッチ=あたまのスイッチ、おなかのスイッチ、からだのスイッチが入るからです」
大人でも朝食を食べない人は目立つ。農林水産省の調査では、特に「20代から30代の男性の約30%は朝食ぬき」だという。同省は朝食をとることの大切さも啓発している。
お茶漬けを食べるシーンで、これまで朝はあまり想定できなかったが、意識の転換にもなりそうだ。緊急事態宣言で夜の営業時間が短縮された飲食店の中には「朝ラーメン」を提唱して人気を呼ぶケースもある。
売れゆきトップ3は、やはり「あの味」
永谷園のお茶づけが発売されたのは1952(昭和27)年なので、来年で70年となる。
開発したのは永谷嘉男氏(永谷園10代目当主。1923~2005年。同家のルーツは煎茶の創始者である永谷宗七郎)とその父武蔵氏で、居酒屋で飲酒した後の仕上げに頼んだ茶漬けから、簡単に作れる「お茶づけ海苔」がひらめき、親子で共同開発したという。
もともと「湯漬け」は古くからあり、戦国武将が好んだ逸話もある。後に茶漬けとなり、一般庶民も食べていたものを、試行錯誤の末に即席茶づけとして世に送り出した。
発売当時のパッケージを見ると、歌舞伎で使う定式幕、高札に江戸文字で書かれた書体などは、現在も変わらない。現在は隈取り(歌舞伎特有のメイクで同社の登録商標)も入り、より江戸情緒感が増した。
2016年11月から復活した「東海道五拾三次カード」(1枚入り)も印象深い。
永谷園に、お茶づけ商品「売れゆきベスト10」も教えてもらった。中でもトップ3は、やはりというべきか。誰もが一度は食べたであろう商品が並ぶ。