「より望ましい孤独死」を模索しなければならない
個人が好きなように生きられ、しがらみも少ないライフスタイルを選んだ帰結が孤独死だとしたら、これから孤独死する人の数は増えるしかあるまいし、それをなくしてしまうのはきわめて困難である。選んだライフスタイルとも矛盾している。
だとしたら、孤独死とは絶対に回避すべきものではなく、悲劇や損失や脅威とならないものに形を変えていかなければならないものであり、より望ましい孤独死を模索しなければならないものではないだろうか。
現在進行形の孤独死対策、たとえば行政の取り組みや孤独死保険への加入などについては前掲『超孤独死社会』などを参照いただくとして、ここでは未来の可能性を展望してみる。
人々の生死や健康状態が「モニタリング」されるようになる
私は、そう遠くない未来に孤独死は悲劇や損失や脅威ではなくなっていくと踏んでいる。なぜなら、私たち自身の生死や健康状態が今後オンラインでモニタリングされ、マネジメントされる可能性が非常に高いからだ。
2021年現在の段階でも、たとえばiPhoneやApple Watchなどを用いて自分自身の健康状態をモニタリングし、オンライン経由でマネジメントすることはそう難しくない。健康意識の高い人やデジタルガジェットが好きな人なら、脈拍や血圧、睡眠や活動量などをすでにモニタリングし、セルフマネジメントに役立てていることだろう。
こうした健康モニタリング機器は、現段階では測定できる項目に制約があり、信頼性や制度上の問題も抱えている。しかし巨大情報企業はこぞってこの分野に投資し、そのテクノロジーの進歩には日進月歩の趣がある。
2020年3月から、日本でも5G回線が普及しはじめたが、これは、あらゆるモノがオンライン化していく趨勢(いわゆるIoT化やICT化)の基盤になるといわれている。通信インフラの充足がウェアラブル端末の発展と歩調を合わせていけば、自動運転やネットワーク家電などによって生活がより便利かつ安全になっていくだけでなく、私たちの健康管理も自動化・オンライン化され、濃密なモニタリングやマネジメントの対象となることは想像に難くない。
新型コロナウイルス感染症対策アプリである「COCOA」が象徴しているように、そうした健康管理のモニタリングやマネジメントは位置情報とも関連付けて行われよう。たとえば毎朝散歩をしている独り暮らしの高齢者が今日に限って散歩をしなかった時、最初に異変を察知するのはICT端末群と、それをモニタリングしている巨大情報企業だろう。