孤独死には「自殺者」も含まれる
まず、孤独死の現状を確認しておこう。先述の通り、「65歳以上の独居者の死亡場所が自宅である事例」は増えている。
加えて、65歳未満でも孤独死は起こり得る。一般社団法人日本少額短期保険協会「第4回孤独死現状レポート」によれば、平成29年に起こった孤独死の平均年齢は61歳で、高齢者に満たない年齢の人が半分以上を占めている。孤独死の報道には現役世代も敏感だが、このレポートを踏まえれば過剰反応とは言えまい。
死因に目を向けると、病死や不詳死に加えて自殺の割合が大きいことにも気づく(図表2)。
同レポートによれば、孤独死の10%以上が自殺によるもので、40代以下では2割を上回る。孤独死として発見される人のなかには、たとえばゴミ屋敷のなかで暮らすような、いわゆるセルフネグレクトに相当する人も少なくない。
孤独死に詳しいノンフィクション作家の菅野久美子は、新著『超孤独死社会 特殊清掃の現場をたどる』のなかで、孤独死を統計の数字以上のものとして、生々しい筆致で描いている。
特殊清掃の現場には、急病で苦しんだ故人の形跡や、心身の病に疲れ果てた故人の形跡が残されている。およそ、幸せな死や平穏な死ではなかっただろう。引き取り手のない遺骨、死してなお知人縁者に疎まれるエピソードなども故人の境遇を思い起こさせる。菅野が描写する孤独死からは、うろたえるほどの不幸の気配が立ち込めてくる。
単身世帯の増加は、日本人が選んだライフスタイルの帰結
こうした、孤独死の統計やルポルタージュを追っていくと、たくさんの人々が不幸のうちに孤独死している現状が目に浮かぶ。だから現在の孤独死が福祉上の大問題として論じられることに違和感はない。
他方で孤独死は、人間関係の乏しい人や不幸な身の上の人だけの問題でもない。
たとえばパートナーや家族と暮らしている人も、死別や家族の独立によって独り暮らしが始まる。厚生労働省『国民生活基礎調査(2019)』によれば単独世帯の数は年々増え続けており、すでに高齢世帯の49.5%が独り暮らしだという(図表3)。メディアはそんな単独世帯の増加を、危機感をもって報じる。
危機と言われれば危機に違いない。
だが昭和から平成にかけ、核家族単位で子育てを行い、子が独立していくことを当たり前とするライフスタイルを選び取った私たちにとって、単身世帯の増加とは、しがらみからの解放や自由な人生の選択と表裏一体だったはずである。これは、日本人が選んだライフスタイルがもたらした当然の帰結ではなかっただろうか。