孤独死や他殺などさまざまな事情で放置された遺体の現場を処理する「特殊清掃」という仕事がある。20年以上、特殊清掃の仕事を続けている高江洲敦氏は「トイレに腰かけたまま白骨化した30代女性のケースは、本当に悲しい話だった」という――。
※本稿は、高江洲敦『事件現場清掃人 死と生を看取る者』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。
※ご遺族と故人への配慮から、文中の設定は一部変更してあります。
仕事の7割は「孤独死」関係
現代は無縁社会といわれ、かねてより孤独死が問題となってきました。事実、私が特殊清掃の仕事で出会うのも、7割は孤独死です。
孤独死とは、一般的には誰にも看取られずひとりで死亡することをいいます。しかし、これまでさまざまな現場を経験する中で、私は孤独死を「故人の死を誰ひとり偲ぶ人がいない状態」だと解釈するようになりました。
ある日、私のもとに行政から一本の電話が入りました。閉鎖され、長年使われていなかった団地の一室を清掃してほしいという依頼でした。団地を解体して土地を売却することになり、査定のために現地を訪れたところ、その一室で身元不明の男性が亡くなっていたとのこと。
団地を訪れると、1階部分は窓やドア、階段の入り口などすべてにコンパネが釘で打ち付けられ、一見すると内部に入ることができない状態でしたが、人目につかない敷地奥の一室だけはコンパネが剥がされ、誰かが出入りしていた形跡がありました。
空き家の「行旅死亡人」。当初は押し入れの穴から床下に入り生活していた形跡があった。