人見知り、引っ込み思案…地味なワセダ生がコロナ禍でイキイキする訳

2人の活動を知り、小高を訪れる大隈塾の学生も増えた。12月でいったんプチ移住を終え、林さんは東京で試験勉強に精を出し、合田さんは石川県加賀市に飛ぶ。小高で知り合った人の紹介で、春休み終了までの短期間だが、町おこしの手伝いをする。そして今後は起業も視野に入れつつ、さらに活動の幅を広げていく予定だという。

さて、ここまで読んで、「2人は特別積極性のある活動的な学生だったからだろう」と感じた人もいるかもしれない。しかし、自宅にこもらざるを得ない状況だったにもかかわらず、新たな活動に挑戦した学生もいる。

仲真吾さん(写真提供=本人)

オンラインでできることを模索し続け、学生向けビジネスコンテストの運営に携わるようになった同じく早稲田大学文学部1年生の仲真吾さんだ。茨城県出身の仲さんは、実家から大学に通う予定だったが、前期は自宅待機となった。母親が介護関係の仕事のため、家庭のルールで不要不急の外出は厳禁、「ずっと家の中にいました」。

一浪して合格を勝ち取った仲さんにとって、浪人中は我慢の連続だった。大学のサークルを紹介する雑誌を買い求め、ツイッターで情報収集しながら思い描いたキャンパスライフはオンライン上になり、家族に迷惑をかける可能性を考えると出歩くこともできない。相当なストレスだったことは想像に難くない。しかし仲さんもまた「大隈塾」を受講していたうえ、GW以降はオンライン授業を通じて何人か友人ができていった。

「大隈塾では『自分はこれをやりたい』と手をあげる人がたくさんいて、それを皆で応援する気風があります。僕も『仲くんなら大丈夫』と背中を押してもらって、声に出して言ったり、チャレンジしたりすることへの抵抗感がなくなりました。ただ、僕は林さんたちのように外に出ることができなかったので、特に緊急事態宣言が解除された夏休み期間中は、周囲から取り残された気がして一番きつかったです。でもずっと会えなかったからこそ、9月に大学の一部授業が対面でも受けられるようになって皆と直接会えたときに『僕には大切にしなければいけない仲間がいる』と実感が湧きました」

仲さんは大隈塾を通して「自分を好きでいてくれる仲間に人生をかけたい」と思うようになった。そして尊敬する先輩に誘われて、3人で2020年10月に「Anone Project」(アノネプロジェクト)を発足した。

撮影=仲真吾
アノネプロジェクトのメンバー

「学生向けビジネスコンテストを企画・運営する団体です。2月の初開催に向けて、いまも企業にアポイントをとってオンライン面談で協賛金のお願いをしています。成人式も中止になってしまったんですが、それ用に買ったスーツを着て、PCの前で説明させていただいています」

まだ将来の予定は見えていないという仲さんだが、2021年度の目標は、「仲間を応援するためにマネジメントスキルをあげることと、自分自身もやりたいことを見つけて、実現する努力をしていきたいです」と話してくれた。