地域ごとの接種状況にはばらつきが
年明け早々にワクチンの接種スケジュールが発表されると、イタリア国内には一様に安堵の空気が流れた。とはいえ、イタリアでもっとも感染者の多い、筆者が住むロンバルディア州では、コロナ医療最前線といえるサッコ病院に届いた1万1000本の注射器のサイズが違っていて(しかも改めて取り寄せた次の注射器もサイズ違いだった)、接種開始が遅れる一幕もあった。
地域ごとの接種状況にもばらつきがある。イタリアは元々都市国家が集まってひとつの国を形成したという建国の歴史があり、現在でも各地方が持つ自治権が大きい。
イタリア北東部、南チロル地方にあるドイツ語圏のトレンティーノ=アルト・アディジェ州では、ワクチン接種に反対する人が多く、医療関係者を除けば予定の接種数をこなせていない。ボルツァーノ県評議会のトーマス・ウィドマン氏は「80歳以上の方と持病をお持ちの方は、感染したときのリスクが高いので接種してほしい」とメディアを通して訴えたが、この地方では接種開始1週間の目標である60%を大きく下回る、29%の住民にしか接種できていない。
注射器の入荷トラブルがあったロンバルディア州ミラノでは、この地でもっとも影響力を持つ右派政党「同盟」のマッテオ・サルヴィーニ党首が毎日のように「ワクチンは不要! 義務化するな!」と大声で訴えている。サルヴィーニ党首はかつて連立政権を組んでいた左派政党「五つ星運動」のベッペ・グリッロと並ぶ、反ワクチン的主張で知られる政治家で、副首相兼内務大臣時代の2018年には、子供への各種ワクチン接種を義務づける法律の廃止において大きな役割を果たしている。
ナポリでは順調に接種が進む
一方で、ナポリを州都とする南部カンパーニャ州のディ・ルカ州知事は、1月10日までに予定していた対象者の約90%が接種済みと胸を張った。
「6000本分のワクチン接種を予定していたが、すでに5800本分が終わった。このままではワクチン接種を中止しなければならなくなる。(イタリア政府の)アルクリ氏にはすぐに追加を送ってくれと連絡をした」と、ワクチン接種のために広場に集まっていた市民を前に訴えた。
ナポリの保健所では1日に1500本の接種を予定していたが、これに数千人の行列ができた。ワクチン接種後はアナフィラキシーショック(アレルギー反応)をみるために15分間はその場にとどまらなければならないこともあって、ワクチン接種会場となった広場は人であふれた。