ローマ教皇も「ワクチン接種推進派」

そんな中、バチカンでは市全体(住民と労働者を合わせて6000人)の需要をカバーできる1万3000回分のワクチンを確保するとともに、ワクチンを保管するための超低温冷蔵庫も購入したと発表した。バチカンはワクチンの製造元を公表していないが、超低温冷蔵庫を用意したことから、イタリアの日刊紙「メッサジェッロ(Messaggero)」はファイザー社製ではないかと報じている。

ローマ法王はワクチン接種済――。昨年のロックダウン中のサンピエトロ広場(2020年3月11日)
写真=iStock.com/Photo Beto
ローマ法王はワクチン接種済――。昨年のロックダウン中のサンピエトロ広場(2020年3月11日)

13日にはフランチェスコ教皇とラッツィンガー名誉教皇(前教皇のベネディクト16世)が、パウロ6世記念ホール前の診療所で、2人そろってワクチン接種を行った。フランシスコ教皇は「倫理的に誰もがワクチンを接種しなければならない」とインタビューにて発言しており、「同盟」などが掲げる「NO VAX」(反ワクチン)とは逆の立場を表明している。

このようにイタリアのワクチン接種への賛否は、政官民、さらには神までをも巻き込んだ論争に発展している。かつてならローマ教皇の一言で、人々は素直にワクチン接種の方向に動いただろうが、教皇の言葉があってもなお人々がワクチンに対する疑いを捨てきらない状況に、イタリアという国の大きな変化を感じる。

ウイルス学者のロベルト・ブリオーニ氏は「多くの医療専門家が合理的な理由なしにワクチンの危険性を語り、治療すべき患者たちをむしろ危険にさらしている。また、政治的な理由も阻害要因になっている。政府は医療専門家とともに、ワクチン接種を法的に義務化すべきかどうかを決めるべきであろう」と警鐘を鳴らす。

イタリア独自のワクチンも開発中

EUでのワクチン接種で先行しているのはファイザー/ビオンテック社(米/独)、モデルナ社(米)、アルトラゼネカ社(英)の製品だが、イタリア国内の製薬会社2社もワクチンの実用化に取り組んでいる。ローマに本社を持つレイテラ(ReiThera)社とタキス・ビオテック(Takis Biotech)社の2社がそれだ。

レイテラ社のワクチンは現在、安全性を試す第1段階の治験に成功し、有効性を確認する第2段階の治験を実施中だ。タイプとしてはアストラゼネカ社などと同様の、病原性のない「運び屋」(ベクター)役のウイルスに抗原たんぱく質の遺伝子を組み込んだ「ウイルスベクターワクチン」型。一方、DNAワクチン型のタキス社のワクチンも同様に第2段階の治験に入っており、夏には市場への供給が可能になるとみられている。