検査したほぼすべての子供の尿から農薬が見つかった
農水省の「品目別残留農薬基準値」でお茶の項目を見ると、約200種類の農薬が出てくる。つまり、お茶の栽培にはそれだけの農薬が認可されているということで、どの農薬を使ったかは、使った農家しか分からない。このデータは、そのうちのネオニコ7種に絞って調べたということだ。
「お茶を調べようと思ったのは、長野県で子供の尿に含まれているネオニコを分析したのがきっかけでした(*2)。ほぼ全員から検出されるので、どこから摂っているんだろうと思って、お茶に見当をつけたわけです。日本人はお茶などを介して、日常的に農薬を摂取しているんですね」(池中氏)
ちなみに、麦茶やウーロン茶からはあまり検出されなかったという。「焙煎する過程でなくなったのだろう」と池中氏は推測している。通常、ネオニコは270度以上で分解されるからだ。
ただし、中国産ウーロン茶からは重金属もよく検出されるので要注意だ。
農薬が検出されることについて、「日本は高温多湿で害虫が発生しやすいから仕方がない」という意見もある。しかし池中氏は、同時にスリランカ産の茶葉(紅茶)も検査したが、ネオニコは検出されなかった。「紅茶にする加工の過程(発酵)でネオニコが抜けた可能性は否定できませんが、完全に抜け切ることはないと思います」と言う。
スリランカは熱帯モンスーン地帯にあって、気温も湿度も日本より高く、害虫も少なくないはずだ。栽培にネオニコが使用されなかった可能性が高い。
それにしても、なぜお茶からこれほどネオニコが検出されたのだろう。
*2 Yoshinori Ikenaka et al.:Environ Toxicol Chem. 2019 Jan;38(1):71-79.
ほとんどの野菜からネオニコが検出されている
実はこのネオニコ、検出されるのはお茶からだけではない。
「野菜ジュースからも100%出ます」(池中氏)と言うように、日本人は、お茶や野菜が主要な曝露源になっている。東京都は毎年、「国内産野菜・果実類中の残留農薬実態調査」を公表しているが、平均して約6割の農産物からネオニコが検出されている(図表2)。
2016年度の検出率は、キュウリやホウレンソウなどが100%。ナス75%、トマトは71%、キャベツは50%で、露地栽培よりも、ハウス栽培の方が比較的高い。逆に検出されなかったのは、ニンジン、蓮根、ブロッコリー、アスパラガス、スイカなどだった。
果実は毎年、7割以上から検出されている。虫食いの痕があったり、形や色が悪かったりすると「B品」と言われて安値で取引されるから、農家もしっかり農薬を撒かざるを得ないのだろう。私たちは毎日、これらの作物を通して農薬を食べているのである。
池中氏に「最近は野菜スープによる健康法が人気ですが、通常の野菜をスープにして飲むとどうなるんですか」と尋ねると、「たぶん農薬を摂取します」と躊躇なく言った。
もちろんこれらは、国が定めた残留基準値内だから、違反ではないのだが。