なぜ、「出来の悪い」3年生の選手をアンカーに起用したのか

箱根駅伝96回の歴史で最終10区での首位交代は過去8回ある。最後に“逆転負け”を経験しているのが駒大だった。第77回大会(01年)で順大に17秒差を逆転されている。しかしその後、悔しさをバネに箱根駅伝4連覇(02~05年)を達成。学生3大駅伝では最多23回の優勝(出雲3回、全日本13回、箱根7回)を積み重ねてきた。

そのすべてで指揮を執ってきたのが大八木監督だ。

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13年ぶり7度目の総合優勝を果たし、記者会見する駒大の大八木弘明監督=2021年1月3日、東京都千代田区

今季は全日本を6年ぶりに制すと、箱根は13年ぶりの優勝。「駅伝2冠」に輝いた。今大会は青学大、東海大、駒大が3強と呼ばれており、名将は、優勝争いが最後の最後までもつれることも想定してアンカーに石川の起用を決めたという。

「チーム内に競争心が湧いていたなかで、この1カ月くらいは石川に男気があったんです。昨年も10区を走っていますし、7区や9区も考えていたんですけど、最終的に10区の起用を決めました。昨年は競り合いに負けましたが、今回はリベンジしてくれるんじゃないかなと思っていたんです。それに今回は3年生に助けられた感じがしますね」

箱根駅伝を経験している4年生3人を当日変更で外した采配

今回の出走メンバーで4年生は1人のみ。箱根駅伝を経験している4年生3人を当日変更で外している。一方で、11月の全日本大学駅伝の出走がゼロだった3年生を3人も起用した(他は1年生3人、2年生3人)。

「4年生はしっかり引っ張ってくれたんですけど、1~3年生がだいぶ力をつけていました。温情で4年生を使いたい気持ちもありましたが、情で起用すると失敗する。練習を見て、今回は若い選手を使って、次につながるチーム作りを考えました。同じくらいの調子であれば、勢いのある1~3年生を使いました。本当にギリギリまで悩みましたね」

4学年で一番レベルが低かったという3年生だが、厳しいレギュラー争いを勝ち抜き、強烈な存在感を発揮した。6区花崎悠紀は区間賞の快走、8区佃康平は創価大との差を22秒短縮。10区石川は世紀の大逆転を演じた。

「箱根前の合宿では3年生3人がパーフェクトにやれていたんです。3年生はダメだ、と言われてきたんですけど、今回はこれまでの悔しさを出してくれたような感じはしますね。アンカーの石川だけでなく、3人の走りが最終的な結果につながったと思います」