意思決定への介入と孫ビジネス
以上のことからも、保険や高級家具などを売るときに、調子の良い営業が出てきて「この保険が良くて~」といった都合の良いことを言い、最終的に「この人良い人だったから」など、よくわからない理由で買ってしまうということにつながるわけだ。
結局のところ、悪徳系サブリース不動産屋や、押し込み系の証券会社などもそうだが、実はこれらは、「孫ビジネス」なのである。
仮に祖父母のところに可愛い孫が全然来ないとする。そこに孫くらいの年齢のツーブロックの兄ちゃんが来て、「おじいちゃん、肩揉みましょうか?」とか「おばあちゃん、なんか困っていることないですか?」などと言いながら、しばらくすると、「ところでこの土地なんですけど~」といって商品を売る。
ものすごく乱暴な言い方をするとすれば、このような高齢者の資産を狙うビジネスは、住宅や金融商品を売っているのではなく、「孫」を売っているのである。
「意思決定に介入できる」ことがリアル販売の強み
この「孫と話をしたい」という真のニーズを理解せずに「対面証券は手数料が高くて顧客に損をさせている」とか「アパートローンでサブリース組ませるのは明らかにおかしい」とか言うのは、100%間違っている。
孫の部分でお金を取ってしまうとフィクションが守れないので、住宅や金融商品など、別の部分でお金を取るというビジネスなのである。
これは接客にお金を払わずお酒に払うというキャバクラのような商売と、原則的には同じ構図である。キャバクラの場合は、疑似恋愛というフィクションを守るために代わりの飲み物にチャージするのだ。
こういったことを理解せずに銀座のクラブの水が高いとか、アパートローンは顧客に損だとか、お年寄りのための金融商品の手数料が高すぎる、と言う人がいるが、そんなこと言うのであれば、本物の孫が行ってあげるのが一番良いのである。リアルの孫がサボっているから、孫の代わりが出てきて、高齢者からお金を巻き上げていくのだ。
旧来の大塚家具にしろ、保険の店頭代理店にせよ、孫ビジネスにしろ、このように「リアルで売る」ということは、「人の意思決定に様々な形で介入できる」という強力なメリットが働くのである。逆に、拙著『金儲けのレシピ』にも書いたように、このような仕掛けを知っておくことが、消費者として自分を守るための知恵となるのである。