一方で、この世界には多くの職種が存在し、そこで生まれる多様な表情を待ち望んでいる方がいらっしゃいます。表情の変化を捉えたい・捉えてほしい・それらに価値がある職種が無限に存在することを私は、認識しています。
前述の政治家の方もおそらく何かを訴えるためにそのスピーチにおいてマウスガードを使用したのかもしれません。ドラマやお芝居などで活躍されている俳優の方の表情がマスクで半分以上覆われていたら、視聴者として非常に残念なものになってしまうでしょう。聴覚障害の方にとって、会話している相手の口の動きがマスクで覆われていることの不便さも問題になるかもしれません。
マウスガードはマスクの代わりにはならない
ここまで感染対策という観点で、お話を進めマウスガードの脆さをある種批判的に吟味しておりました。しかし、リスクを少しでも減らすためにそれを有効に活用されている方がいらっしゃることでしょう。通常のマスクではなく、マウスガードをつけざるを得ない状況にある方がいらっしゃるのも事実でしょう。
なので、一律に否定するつもりもありませんが、この記事を通じて、マウスガードを装着した上での言動には注意があるという認識を少しでも多くの方に持っていただければと感染症専門医として述べておきたいです。
マウスガードをつける方も、つけている方と接触する方もこれまで記述してきた内容を十分に理解した上で接触を図るべきでしょう。
マウスガードを装着している方とのコミュニケーションは十分な距離をとって、密な空間を避けながらとることをお勧めしたいです。マウスガードをつけていればマスクの代わりになるとは考えにくいことを強調したいです。
いずれにせよ、この時代を生きる一人の人間として、マスクによって顔の半分程度を覆い、表情を共有できない世の中に生きていることを極めて残念に思うこともありますが、今後も適切に感染対策を講じながら皆様が少しでも健やかに、穏やかにお過ごしできることを願っております。