あまり海外の状況と国民の日常生活レベルの行動に関して比較するデータや知見を持ち合わせてないですが、多くの方が賢明に真摯にできることに全力で取り組んでいるのを痛感し、日本で生活する方の真面目さを日々感じておりました。そんな感染対策に取り組む多くの国民の姿に、ひそかに一内科医として感動していました。

そんな中、堂々とマウスガードをしながら記者会見などメディアに露出されている著名人を見て、違和感を覚えたのです。

冒頭で述べたとおり、医療現場で医療者が装着していないマウスガード、その脆さについて述べたいと思います。

飛沫の拡散を抑えられないマウスガードの脆さ

感染リスクという観点で言えば、医療従事者が非医療者よりもリスクが高いことは言うまでもありません。感染予防に関して、医療者はより慎重な対応をとっているかと思います。例えば、本年のインフルエンザワクチンを一つ具体例として挙げましょう。

高齢者のみならず医療従事者も優先的にインフルエンザワクチンを接種する方針を政府が打ち出していました。つまり、医療者は感染症という病においてハイリスクな立場にあることを表しているかと思います。

PPEスーツ、マスク、ゴーグル、フェイスガードを身に着け、疲れぎみの女性医療従事者
写真=iStock.com/Boyloso
※写真はイメージです

その医療者が医療機関内でマスクではなく、マウスガードを装着していることはありません。これは、感染症の対策という観点から標準的な予防策になっていないことを改めて認識するための情報になるのではないでしょうか。

裏付けられた効果…予防効果の高いマスクはどれか

では、実際に医療者がマウスガードではなく、マスクを装着しているわけですが、そのマスクにはそもそもどのような効果があるのでしょうか?

『New England journal of Medicine』という医学界で最高権威の雑誌に次のような動画が掲載されております。マスクの有無による飛沫の程度を検証した動画です。

マスクなしとマスクありで会話した場合の飛沫の拡散を比較しております。通常の会話でも飛沫があり、感染が伝播することが予測できることから、症状の有無にかかわらず、3密な状況などにおいて、全ての人がマスクをする「ユニバーサルマスク」という概念が普及しております。

このユニバーサルマスクによって、中国の北京で家族内感染が低下した報告(BMJ Glob Health. 2020 May;5(5):e002794.doi: 10.1136/bmjgh-2020-002794.)や米国でマスク装着の義務化で新型コロナウイルス患者が減ったという報告(Health Aff (Millwood). 2020 Aug;39(8):1419-1425.)も出ており、マスクの効果を裏付けるような結果が出ております。

では、次に述べたいのは、どんなタイプのマスクに予防効果があるのか? 今回問題提起したマウスガードも実は予防効果が証明されているのではないかと疑問に思われる方もいらっしゃると思います。