最後に布マスクについても注意点をまとめときます。

6.布マスクの衛生状態に注意が必要。布マスクの効果については議論が分かれるところがあります。ただしそれは布マスクの衛生状態の管理状況に由来するのではないかとも考えられております。布マスクを使用している方もいらっしゃるかと思いますが、とにかく清潔を保つことをお勧めします。洗剤や石鹸で洗濯後によく乾かしてから使用しましょう。

「正しいマスク」を実践している人は約2割だけ

改めて復習すると、自らのマスクの装着が十分ではない、適切ではないという方も多いのではないでしょうか? 2020年9月に東京医科大学の町田先生らが報告している本邦の成人のマスクに関する知識を聞いた調査があります。(Int J Environ Res Public Health. 2020 Sep 6;17(18):6484.)

2020年6月10日の池袋。緊急事態宣言の解除後、マスクを着用した多くの人が出歩いている
写真=iStock.com/Fiers
※写真はイメージです

この調査では、下記の表にまとめたWHO推奨の正しいマスクの使い方の遵守率は38.3~83.5%でした。これらの項目全てを実践している人は23.1%のみだったようです。これは本邦においてまだまだマスクに関する正しい知識と行動が求められると言えるのではないでしょうか。

WHOが推奨している使い捨てマスク(不織布マスク)に関する7つの正しい使い方
1.隙間ができないように鼻と口を覆う
2.使用中はマスクの表面に触れない
3.外すときは表面を触らずにひも部分を持って外す
4.マスクを外した後や表面を触ってしまった後は手を洗う
5.マスクが湿ったら交換する
6.使い捨てマスクを再利用しない
7.使い捨てマスクは外したら捨てる

適切なマスクの装着方法の理解や行動が十分ではないという現状を考慮すると、もしかすると皆様がマウスガードの装着にさほど違和感なく過ごされているかもしれないとも、私は思いました。

こちらに示しWHOの7つの正しい使い方や先の自衛マニュアルの図表を見れば分かる通り、マスクがマスクとして効果を最大限発揮するための方法・装着の意義を理解すると、おのずと皆様もいかにマウスガードでは感染対策として力不足だと認識できるのではないでしょうか。

また、3密な環境において、マスクではなくマウスガードの装着が感染対策として不十分であることも理解できるのではないでしょうか。

表情を共有することはとても大事なことだけど…

これまで医師として日常診療に携わる中で、できるだけ笑顔をはじめとする表情に、かなり意識を注ぎ診療してきたつもりです。診察室に迎える初診の患者様に、少しでもリラックスして話しやすい雰囲気や空間を提供し、それが結果的に診断や治療に円滑に向き合い患者様の健康に寄与するものだと信じておりました。

しかし、このコロナ禍において、そんなことを求める人は皆無になってしまったことでしょう。医療者がマスクを外して、診察室で笑顔を振りまいて患者様を待ち望んでいたら、皆様Uターンでご帰宅されてしまうことでしょう。この現状でどなたも医師の笑顔より感染を懸念した安全な医療を希望されていることと思います。