ここに示すのはマスクの種類による飛沫の濾過の程度の違いを見た研究です。(Sci Adv. 2020 Sep 2;6(36):eabd3083.)写真に提示したマスクが今回の検証に用いられたマスクです(図表1)。ほとんどのマスクはサージカルマスクやN95マスクといった医療機関で使用されるマスクと同様の濾過ろか効果があったようです。

今回の検証に用いられたマスク

ただし、11番や12番のタイプの予防(バンダナやネックウォーマー)は何も装着していないのと同程度であり、感染対策としては不十分であるという結果が出ております。

飛沫の「吐き出し」も「吸い込み」も防げない

残念ながら、この研究における検証されたマスクの中に、マウスガードは含まれておりませんでした。構造上、検証の余地もないと言えるかもしれません。マウスガードを直接的に効果が乏しいと言える研究ではなかったようです。

ただし、それだけでは納得しきれない読者の方もいらっしゃるかと思います。そこで、日本から出た研究を紹介させてください。マウスガードや通常のマスクの装着による飛沫の程度を比較した研究です。これは、国立大学法人豊橋技術科学大学の研究結果になります。

マスクやマウスガードの効果を図表にまとめてあります。飛沫を他者に浴びせてしまう、あるいは他者からの飛沫を吸い込んでしまう程度に関して、予防なしの状態と比較して、どの程度マスクやマウスガードなどの装着によって予防できるのかが、具体的に示されております。

マスクやフェイスシールドの効果(スーパーコンピュータ「富岳」によるシミュレーション結果)

マスクによって飛沫の予防に効果がある一方で、マウスガードやマウスシールドはマスクよりも効果が乏しかったことが研究結果からわかります。

春先のようにマスク不足で騒がれた状況と現時点では大きく異なり、マスクも手軽に安価で入手できる状況下において、マウスガードが感染の対策として優先して使用される価値は乏しいと言えるでしょう。

今こそ装着方法の再点検を…予防効果を高める6つのポイント

マスクに関する予防効果を述べてきましたが、そのマスクの装着が適切ではないことを内科医として街中や診療所内でよく見かけます。予防方法として重要なマスクの装着方法に関して改めてここで復習をしましょう。

1.鼻から顎まで覆うことができるサイズを選択します。政府が配布したマスクは一律の大きさでしたが、この観点から十分に感染対策につながっていない方もいます。
2.付ける際、外す際、耳にかかる部分を持つ。マスクの表面を触ったりしない。

以下は、使い捨てマスクの場合の注意点を列挙します。

3.表面のヒダが下向きになるよう、マスクの裏表を正しく装着する。よく逆さになっている方をお見受けします。
4.マスクの上部の針金は、鼻に沿うようにしっかり曲げて折る。ここがスカスカの方もよくお見受けします。ワイヤーの跡が残るくらいしっかりと顔の輪郭に沿わせて閉鎖空間を作ることが大切です。
5.顎まで覆われるようにヒダの開きを調整する。こちらも顎の途中でマスクが止まっている方もいらっしゃいます。しっかりと広げて、顎まで覆って使用しましょう。
マスクの正しい使用法