投票権をもたない若者も政治参加できる

こうしたデジタル技術は、社会のイノベーションに寄与しますし、政治であればオープン・ガバメント(開かれた政府)を実現する基礎となるでしょう。社会や政治が抱える様々な問題の解決法に対して、まだ投票権さえ持っていない若い人たちでも、「もっと良い方法があるに違いない」と思っています。そうした意見を共有し、議論することは、若者の政治参加にもつながるでしょう。デジタルは、多くの人々が一緒に社会や政治のことを考えるツールになるのです。

デジタル担当政務委員としての私の役割の一つは、このように人々がお互いに語り合える場をオンライン上で提供することです。ただし、私は政府のためだけに働いているわけではなく、特定団体の利益のために働いているわけでもありません。人々が語り合うために私が設計したプラットフォームは、世界中の多くの政府で使われています。その意味では、私の仕事は世界を結ぶための橋梁のようなものでしょう。

「プラストロー禁止」法制化を求めた1人の書き込み

この「vTaiwan」や「Join」は、政策についてのパブリック・オピニオンを募るために使われています。今述べたように、国民はこのプラットフォームを利用して、自らが考えた実施可能な政策アイデアを出すことができます。このことにより、政府と国民の間の境界線はなくなり、両者はオープンな協力関係を築くことが可能になります。つまり、政府と国民が共通の目標を持つパートナーになるのです。

このプラットフォームを介して実際に国民の声が政策として実現された例を一つ挙げてみましょう。台湾では2019年7月に店内飲食についてプラスチック製ストローの使用を法律で禁止しました。この政策のきっかけとなったのは、「I love elephant and elephant loves me(私はゾウが好き、そしてゾウは私が好き)」というハンドルネームの人物が、プラスチック製の皿とストローの段階的な使用禁止を求めた「vTaiwan」への書き込みでした。

この提案に対して、請願に必要な5000名の署名がすぐに集まりました。その結果、企業が紙やサトウキビなどの再生可能な資源からストローを製造することを承諾し、環保署(日本でいえば環境省)が政策として法制化することになったのです。今ではプラスチック製のストローは、紙やサトウキビを使ったストローが使用されるようになりつつあります。