小さな声を社会に反映させる2つの仕事

このような小さな声をすくい上げて社会を前進させていくために創設したのが、「パブリック・デジタル・イノベーション・スペース(Public Digital Innovation Space、略称PDIS)」と「パーティシペーション・オフィサー(Participation Officer、略称PO)という2つの職務です。これらがどういう活動をしているのか簡単に紹介しましょう。

まずPDISでは、私たちが直面している社会問題や環境問題の解決に向けて、みんなで力を合わせて取り組む「コラボ会議(協作会議)」と呼ばれる会議を開催しています。これはすでに70回以上行ってきました。伝統的な民主主義において、有権者は問題の解決を代表者(立法委員)に頼っています。

この有権者に代わって意見を述べる人たちは政治のプロでなければならず、自分の考え方もしっかり持っていなければなりません。

「5000人が賛同すれば政策に反映する」というルール

しかし、実際に社会問題や環境問題の被害を受けている人たちの中には、こうした委員とのコミュニケーションのとり方がわからない人も多く、そのため委員が有権者の意見を十分に反映していない危険性もあります。また、委員の意見と有権者の意見とが衝突するような場合に、委員は必ずしも有権者の意見を取り入れて議論するとは限らないことが考えられます。これらは単一民主主義における基本的な問題点と言えるでしょう。

このような問題点を解決するために、PDISは少数意見を把握し、委員も気がつかない問題を取り上げたり、直接委員とやり取りできない人たちでも、インターネットを利用してつながりを持つことができるプラットフォームの役割を担っています。

具体的な例を挙げてみましょう。今年の6月に「ある問題」をコラボ会議で取り上げることが決まりました。この案件は4月に提起され、5月末には賛同者(ネット上の署名者)が5000人を突破しました。

私たちのプラットフォームでは、「2カ月以内に5000人が賛同した場合には、必ず政府が政策に反映する」というルールがあります。もし5000人に満たない場合は、対応してもしなくても構わないのですが、5000人を超えると、政府には誓願内容を政策に反映しなければならないという義務が発生するのです。