「きれいになってよかった。次に頼む時は死んだ後だな」

そして一方で、男性は、私が部屋を出入りするたびに、「××は取っといてくれているかな?」と声をかけてきた。作業員の中で唯一の女性だったため、話しかけやすかったのだと思う。

ちなみに××の内容は毎回違う。私に尋ねてくる時は、この世が終わってしまうかのような不安気な様子だった。

「全部あそこにきれいに分けていますよ」

と、私が答えると、男性は安心したように何度もうなずき、「ありがとう」とつぶやくのだった。

撮影=平出勝哉
(左)作業前の男性宅。足の踏み場もない状況だった。(右)作業後。室内はすっかり片付き、布団の上で寝られるようになった。

その部屋は一日の作業でしっかりきれいになった。作業を終えた室内を見て、依頼人の男性はこう言ったのだ。

「きれいになってよかった。次に頼む時は死んだ後だな」

物がなくなった室内で、これから依頼人が生活していけること、そして作業終了時に依頼人の笑顔があること。それは、作業員に何よりも仕事の達成感をもたらす。

依頼人の男性の言葉を聞いた平出さんは「ああ、この人はきっと孤独死しないだろうな」と、確信したという。

誰かがちょっと背中を押してあげれば、ゴミ屋敷から抜け出せることもあるのだ。(続く。第7回は12月18日配信予定)

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