健康食品による体調不良は「医師の盲点」
病気の予防や、より健康になることを期待してサプリメントを服用している方には申し訳ありませんが、少数の例外を除いて、サプリメントの効果は検証されていないか、されていてもごく小規模の質の低い研究しかなされていません。
下手に研究を行って「効果がない」という結果が出れば、商品として成り立たなくなってしまいます。市場競争下では、サプリメントの製造・販売業者はサプリメントの効果を検証する努力をするのではなく、消費者に効果があるかのように誤認させる宣伝方法を洗練する動機が働きます。
効果がないだけならまだしも、サプリメントが害をおよぼす事例もあります。
私は肝臓を専門にしているため、原因がよくわからない肝障害の患者さんについて他の医師から相談を受けるのですが、患者さんによくよくお話を聞いてみると摂取していたサプリメントが原因であることもあります。
肝臓を専門としていない医師でもウイルス性肝炎や処方薬による薬剤性肝障害はそうそう見落としたりはしませんが、健康食品やサプリメントによる肝障害は盲点になってしまうのです。
効果は実証されておらず副作用は未知数
サプリメントによる肝障害は、多くの場合はサプリメント摂取を中止すれば自然に治るものの、まれに重症化することもあり油断はできません。肝機能に余力がある健康な人なら回復も期待できますが、肝臓が弱っている方はサプリメントの摂取を避けたほうが無難です。
また、死亡例の報告も複数あります。
一例として、それまでは症状が安定していた肝硬変の60歳台女性がデパートで購入した粉末ウコンを毎日スプーン一杯飲み始めたところ、約2週間後に症状が悪化し入院するも腹水が溜まり、約3カ月後に多臓器不全で死亡したという事例が2004年に報告されています(※1)。
ウコンは肝臓によいとされていますので、この患者さんも良かれと思って摂取したと思われます。私が受け持っている重度の肝障害を持つ患者さんにはサプリメントは控えていただいていますが、「健康食品は健康な人のための食品なので、病気の人はやめておいてください」とご説明しています。
サプリメントによる健康被害は肝障害だけではなく、ほかにも下痢、嘔吐、発疹、間質性肺炎、腎障害、血小板減少症、光線過敏症などが知られています。これは薬の副作用とほぼ同様のものです。
考えてみれば、健康にプラスの作用だけあって副作用がまったくないなんて都合のよいものがそうそうあるはずがありません。医薬品とサプリメントの違いは、医薬品は有益な作用があることが証明されているのに対し、サプリメントは効果が実証されておらず副作用もあることです。
また、医薬品は開発・認可の過程でどのような副作用がどれぐらいの頻度で起こるのか調べられていますが、ほとんどのサプリメントではそのような調査はなされていません。
※1 内藤裕史『健康食品 中毒百科』(丸善株式会社)