スマートシティ化「世界一位」のシンガポール

次にシンガポールの取り組みについて見ていく。IMD(国際経営開発研究所)によれば、2020年現在、シンガポールはDXと深い関係を持つスマートシティ化において、世界で最も進んでいる(第1位)とされる。ちなみに東京は世界で79位、大阪は80位である。

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そんな東南アジアの都市国家では、観光産業でもDXを目指しており、デジタルパスや解析サービスを筆頭に、さまざまな取り組みを政府観光局(Singapore Tourism Board=STB)主導で進めている。

STBの取り組みとして注目したいのが、同局公式チャンネルがYouTubeにあげている動画「Supporting Tourism Transformation through Learn Test Build Framework」でも描かれているように、3段階からなる変革のためのフレームワークだ。

これは、観光事業者がデジタルトランスフォーメーションを取り入れることを推奨し、さらに観光事業者や技術開発者に広く連携してもらうことで、市場全体の成長を目指す仕組みだといえる。

DXを推進させる「3つのステップ」

ファーストステップである「学習段階(LEARN)」は、企業の自己診断ツールである「観光産業の変革指標(Tourism Transformation Index)」を通じて、DXにおける自社のコンセプトをより深く学んでもらうフェーズである。観光事業者が自社の強みを評価し、改善すべき分野を特定するためのものでもある。すなわち、先ほどDXを導入する前に、「ありたい姿」を描くことの必要性を説いたが、自己診断を通じてそれを行うわけだ。

続いて「テスト段階(TEST)」がある。企業はリスクや投資を抑えつつ、すばやく「学習段階」で描いたコンセプトを試す。「コンセプトが成功すれば、すぐにスケールアップして収益が得られる」とQuek氏は述べている。

それを可能とするのが、イノベーションスペースのThreeHouse。DXを推し進めるためには、各企業がコラボレーションし、さまざまなアイデアやソリューションを試す必要がある。STBの敷地内に設置されるThreeHouseはその“ハブ”となる存在だ。このスペースには、シンガポール・ツーリズム・アクセラレーター(STA)も設置する。

STAの役割についてQuek氏は、「世界中の企業から最高のアイデアを出してもらい、シンガポールに適したソリューションを開発してもらうこと」と語っている。

最後のフェーズは、「構築(BUILD)」である。第2ステップで行ったさまざまな取り組みを集約し、観光分野の変革を促進する「共通のテクノロジーツール」を構築するという意味だ。早急に取り組むのは、Stan(Singapore Tourism Analytics Network)と呼ばれるデータ解析プラットフォームの構築である。

なぜならStanが構築されると、観光事業者は、STBや業界から集約された訪問者の特徴や動態データといった観光関連データにアクセス可能になり、DXによる具体的なアクションの精度を高められるからだ。