国民がGoToに浮かれている折も折、皇居で執り行われた重要儀式とは

儀式が執り行われるのは宮中三殿(皇居吹上御苑にある3つの神社)の廊下の奥にある「神嘉殿(しんかでん)」という聖なる場所。神嘉殿の中に、神が座る神座と、神が休む寝座、そして天皇が座る御座、が設けられる。儀式は午後6時からと午後11時からの2回(有の儀、暁の儀)。それぞれ2時間ずつかけ、同じ内容で実施される。

撮影=鵜飼秀徳
2019年11月の大嘗宮一般公開の様子

長時間の正座を余儀なくされる儀式なので、現上皇さまが天皇だった時、新嘗祭のおよそ1カ月前から正座の訓練を続けられていたという。足がしびれて儀式に集中できなくなることのないように、との思いであった。それほど、天皇にとって新嘗祭は大事なのだ。

その儀式の内容は、秘められている。天皇と陪膳采女(はいぜんうねめ)と呼ばれる女官のみが、神嘉殿の中に入れる。したがって、所作の詳細は天皇になって始めて知ることができるという。

新嘗祭では、この年に収穫されたばかりの新穀が神前に供えられる。新穀で作った御飯や御粥、酒のほか、干物(鯛、いか、鮑、鮭)、果物(干柿、棗、栗など)など。

天皇は、神々への供物を柏の葉の小皿に自ら盛り付ける。そして、神々と一緒にご飯を食べるのである。これは「神と天皇とが一体になる」ことを意味している。新嘗祭が特に宗教色の強い儀式と呼ばれる理由はここにある。

天皇の最初の新嘗祭=大嘗祭に行ってわかったこと

この新嘗祭、昨年は「大嘗祭」という名称で11月14日に執り行われた。大嘗祭とは、新たに即位した天皇の最初の新嘗祭のことを指す。一世につき一度きりの重要儀式であり、大嘗祭をもって正式に神々から皇位継承を認められるのである。

大嘗祭の様子はテレビや新聞などで大々的に報道されたので、記憶に新しい人も少なくないだろう。大嘗祭では、それを執り行うためだけの「大嘗宮」と呼ばれる特別な神殿が建設される。そして儀式が終われば、速やかに取り壊される。

昨年の大嘗祭終了後には、大嘗宮が一般公開された。実は私も京都から、わざわざ見に行った。大嘗宮を見られる機会は一生に何度もあるものではないからだ。この一般参観には、78万人もの人が訪れた。

大嘗宮は見事な神社建築である。祭場となる「悠紀(ゆき)殿」「主基(すき)殿」のほか大小およそ40棟もの建屋で構成されている。その設営を担ったのは、60年に一度の「出雲大社 平成の大遷宮」を手がけるなど、伝統的宗教建築物を得意とする大手ゼネコン・清水建設だった。

大嘗宮に使われた木材は、全国からの選りすぐりのもの。長野産の唐松や北海道産のヤチダモなどの、皮付き丸太を使った古代の建築法が採用された。大嘗宮はおよそ2カ月かけて、計120人の宮大工によって完成した。