紅葉が見ごろを迎えた全国の観光地が人でごった返す中、11月23日に皇居内で重要な儀式が行われた。ジャーナリストで僧侶の鵜飼秀徳氏は「天皇が国や国民の安寧・五穀豊穣を祈るため古くから執り行ってきた新嘗祭と、23日の勤労感謝の日には『1年の収穫物(生産活動)に感謝し、奉納する』という共通項があります」という——。
11月21~23日の三連休の嵐山界隈はコロナ感染症拡大前の様相
撮影=鵜飼秀徳
11月21~23日の三連休の嵐山界隈はコロナ感染症拡大前の様相

新型コロナの第3波到来の中、観光地は人出でごった返し

先日の三連休(11月21~23日)の京都・嵐山は全国各地からの人出でごった返した。例年のことではあるが紅葉の美しいこの時期、名勝・渡月橋からほど近い私の寺では、法事が多くなる傾向にある。檀家さんの多くが、紅葉狩りと法事を兼ねてやってくるのだ。

この三連休では、1日に2座を務めた。しかし、いずれも開始時間が大幅に遅れるハプニングが起きた。近隣の道路が大渋滞したからだ。こんなことは初めてだ。

新型コロナウイルスの第3波到来によって、公共交通機関の利用を避け、多くがマイカーで移動した結果と思われる。合間を見て嵐山に様子を見に行くと、他府県ナンバーの車やバスが延々と続いている。冷え切った観光需要が多少でも回復すればよいが、一方で、コロナ感染症の第3波の拡大も心配な要素ではある。

23日の勤労感謝の日の起源は「新嘗祭」であることをご存じか

三連休最後は、国民の祝日「勤労感謝の日」だった。一見地味な祝日ではあるが、世のビジネスパーソンの生産活動の労を労い、お互いに感謝し合うことが趣旨だ。

しかし、その起源は天皇が古くから執り行ってきた「新嘗祭」にあることをご存じだろうか。勤労感謝の日と、新嘗祭との共通点に疑問を持つ人も少なくないだろうが、「1年の収穫物(生産活動)に感謝し、奉納する」といえば、納得であろう。

テレビのニュースを見ていても、「GoToトラベル」の一時中断などコロナ関連の話題に終始していて、今年の新嘗祭の話題はあまり取り上げられていなかった。だが、実は皇室にとって、1年間を通して最も大事な儀式がこの日行われていたのだ。

本稿では、日本人のアイデンティティともいえる宮中祭祀、新嘗祭を紹介しながら、昨年実施された大嘗祭のその後を追ってみたいと思う。

新嘗祭とは天照大神などの神々にたいし、天皇自らが食事をもてなす祭祀である。新嘗祭には「新穀を嘗める(食べる)」という意味がある。