不況期の地価下落がチャンスになる

<①アパグループ>

企業の力は、好況期よりも不況期に見えるものです。どの企業も萎縮する景気の後退期にどう動くかで、飛躍する企業になれるかどうかが決まります。また平時にどれだけ他日に備えていたかも、その時、問われてきます。

アパホテルは強度偽装問題で銀行から借入金の返済を求められ、自社の資産を売却して返済しました。しかし返済した後にも資金が手元に残っていたため、直後のリーマン・ショックで暴落した土地をこの資金で入手し、成長につなげます。その経緯は次のようなものです。

リーマン・ショックが起きる前年の2007年、建物の構造計算書を偽造した耐震強度不足が社会問題になり、アパグループにも強度不足のホテルがあったため、銀行は借入金の返済を求めました。そのため同社はホテル建設のために取得していた土地を売却し、借入金の返済に充てました。

直後にリーマン・ショックが起きて地価が暴落しましたが、ファンドバブルの時に不動産を売却したことが幸いし、借入金を返済しても同社には手元にまだ資金が残ったのです。

リーマン・ショックの直撃を受けたマンションデベロッパーは、銀行から土地を手放すように指導され、銀行の“貸しはがし”が行われました。

リーマン・ショックで都心一等地を次々購入

逆にアパグループは手元にある余剰資金を使って、都心部の土地を購入していきました。都心部に集中したのは、リーマン・ショック後に地価が最も下落したのが都心の一等地だったからです。不況に襲われ、地価が高く、投資リスクのある都心に競合他社が攻めてこないことも好材料になりました。

写真=iStock.com/Sergei Dubrovskii
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アパホテルは、北は池袋、南は品川、西は新宿、東は浅草と都心の一等地に絞って出店していますが、地価が最も下落した場所はその後値上がりすると考えてのことでした。当時は現在の3分の1から4分の1の値段で買えた物件もあり、全ての土地はその後値上がりしています。

この時下された経営判断が、現在のアパホテルの都心での占有率の高さを物語っています。競合他社が意思決定できないタイミングで、一気に資金を集中投下するのが同社の戦略だったのです。

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<②ニトリ>

不況をチャンスととらえ、バブル崩壊からリーマン・ショック後の不況期にも成長を続け、先を読んで行動している企業がもう1社あります。ニトリです。

ニトリは「いかに安く商品を提供するか」を徹底して追求し、問屋経由でなくメーカーから直接仕入れる方法に切り替え、1985年のプラザ合意による円高を契機に、海外から安く調達する方法を実践しました。その結果、ニトリが開発した輸入品の比率は90%以上を占めるまでになっています。