一見成功している「Go Toトラベル」の“副作用”

「Go Toトラベル」においてまずまずの成果が出ていると書いたが、問題点も指摘されている。それは受益者が偏っている点である。具体的には、エリアと宿泊施設における偏りがある。私も訪れた人気の観光地や都市圏近郊エリアでは利用が伸びている一方で、それ以外の地方エリアでは恩恵が小さいという地域性の偏り。

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さらに、温泉付きの個室を有するような高価格帯の旅館やリゾートホテルでは恩恵が得られているものの、単価の高くない宿泊特化型のホテルやゲストハウスなどでは苦戦が続いているという宿泊施設の形態による偏りがみられる。

先に書いた利用実績では、「Go Toトラベル事業における利用価格帯分布」も発表されており、5000円以上10000円未満の利用が37.4%と最大となっているとされているが、金額別施設の分布や割合、稼働率を考慮すると「比較的低価格の施設への効果が高い」と考えるのは早計であろう。実際、大手旅行会社からは「高価格の宿泊施設ほど先に売れていく」という声が根強い。

アフターGo Toを見据えるならば、こうした偏りは解消しなくてはならない。なぜなら観光業の成長、ひいては日本が世界の名だたる「観光立国」と肩を並べるためには、ここ数年、同業界の問題として指摘されていた「オーバーツーリズム」を解消する必要があるからだ。

そこには2つの理由がある。1つは観光客が集中することによって、地域社会との共存共栄が困難になり、住民の暮らしが脅かされるからだ。

観光庁がその発足当時から掲げてきた「住んでよし、訪れてよし」というビジョンにもある通り、観光振興の目的はあくまで地域住民の暮らしを豊かにすることにある。観光はその手段にすぎない。

観光地にとって深刻な「一極集中」

もう1つは人口減少時代に突入したことで衰退・消滅の危機にある地域独自の文化や生活を維持していくためだ。これは、政府が掲げる訪日外国人数を2030年までに6000万人、あるいは彼らによる旅行消費額を15兆円に上げるという目標を達成するために欠かせない。

しかし、残念ながら現状の「Go Toトラベル」は、どちらかといえば観光客の一極集中を加速させてしまっている嫌いがある。高価格帯のものほど恩恵が得られる傾向があるなか、地域コミュニティとのつながりを重視した取り組みに恩恵が行き渡っているとは言い難い。アフターGo Toを見据えた場合、地域全体の魅力向上に資する宿泊施設をもっとバックアップすべきであるということだ。