払い方次第で社会保険料控除を受けることもできる

年老いた両親を田舎に残して都会で生活しているというサラリーマンは少なくないと思う。ここで、大阪府在住のAさんの場合で考えてみたいと思う。Aさんは、46歳。妻は専業主婦で、子どもは東京の大学に通っている長男(21歳)と、地元の公立高校に通っている長女(17歳)の二人。

父親は既に他界しているが母親が認知症になり、実家(福岡県)の近くのグループホームに入居している。グループホームの入居費用は、Aさんが、毎月振り込みをしているという場合。Aさんは、母親を控除対象扶養親族にできるだろう。

そして、母親が認知症の場合、障害者手帳の交付を受けていなくても、市町村に申請することで障害者控除を受けられる可能性もある。

母親の後期高齢者医療制度の保険料を、年金からの天引きではなくAさんが送ったお金から支払っている場合、その保険料はAさんの社会保険料控除とすることができる。

また、社会保険料の納付書が大学生の長男宛てに届いていても、支払いはAさんがしていれば、Aさんの社会保険料控除に含めてよい。

税金は自己申告しないと安くならない

所得控除は、各自が申請書を提出することで認められる。給与担当者が、「あなたの場合、○○控除が受けられるはずだと思いますよ」と言ってもらえるものではない。

年末調整は、サラリーマン一人ひとりが、自分の家族の収入等を確認し申告するべきものなのだ。

例えば大阪市の場合、HPに下記のような記載がある。

【障がい者控除対象者に認定書を交付します】
 身体障がい者手帳などの交付を受けていない方でも、65歳以上で、ねたきり高齢者または認知症高齢者の方は、その程度が身体障がい者手帳などの交付基準に準ずる場合は、申請により障がい者控除対象者認定書の交付を受けることができます。
 認定されると、障がい者控除または特別障がい者控除の申告において、所得税や個人市府民税の軽減を受けることができます。
 税負担の軽減は、対象高齢者が控除対象配偶者に該当する場合や、扶養親族に該当する場合でも、受けることができます。税金控除の申告にかかる手続きについては、お住まいの区を担当する市税事務所(個人市民税担当)へお問い合わせください。


【対象者】
認定書の交付対象者は、次のとおりです。
・障がい者控除対象
介護保険の認定調査を受けた65歳以上の方で、認定調査票の『認知症高齢者の日常生活自立度』がIIaまたはIIbの方

※『認知高齢者の日常生活自立度』がIまでの方は、精神保健指定医師が発行した診断書を提出していただくことで認定書の交付対象となる場合があります。

・特別障がい者控除対象
介護保険の認定調査を受けた65歳以上の方のうち、次のいずれかに該当する方
1.認定調査票の『障がい高齢者の日常生活自立度』がB1以上の状態が引き続き6ヶ月以上にわたる方

※『障がい高齢者の日常生活自立度』がA2までの方は、主治医が発行した診断書を提出していただくことで認定書の交付対象となる場合があります。

2.認定調査票の『認知症高齢者の日常生活自立度」がIIIa以上の方
【申請に必要なもの】
申請には印鑑と、次のものが必要です。
・ねたきり高齢者の方
介護保険の認定調査を受けていない方、もしくは認定調査を受けているが認定調査票の『障がい高齢者の日常生活自立度』がA2までの方は、主治医の発行した診断書
認知症高齢者の方
介護保険の認定調査を受けていない方、もしくは認定調査を受けているが『認知症高齢者の日常生活自立度』がIまでの方は、精神保健指定医師(精神科医師)が発行した診断書
【申込み】
申請は、各区の保健福祉センター保健福祉業務担当で受け付けています。
障がい者控除対象者認定申請書

出典=大阪市HP

申告し忘れや、申告できないものを申告していないかどうか。扶養控除のことをよく知ることで、令和2年分の年末調整では該当しなくても、来年からその控除が受けられるように工夫することも可能だろう。

医療費控除や住宅借入金等特別控除など、確定申告書を提出することで還付される場合は、別途還付金が振り込まれるので、お金が戻ってきた実感がある。年末調整の場合、手取りが増える形なので差額をゲットした感は得られないが、勤務先に必要書類を提出するだけで事足りる。

離れて生活する子どもや両親に対して、どれくらい収入があるのか、認知症の度合いがどれくらいなのかは聞きにくいことなのかもしれない。日頃からコミュニケーションをとることで、日常生活の状況やお金の話もできるような関係性をつくっておくことが所得控除を活用して節税することにつながっていくと思う。

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