数学的観点から所得控除の効果を検証する
前回に引き続き所得税に関する話だが、今回は控除によるメリットの大小について、数学的な観点から考えてみたい。
ビジネスパーソンの場合、給与収入から、医療費控除、社会保険料控除、生命保険料控除、配偶者(特別)控除、扶養控除、基礎控除などの「所得控除」を引いたものが課税所得となる。ここで質問だ。元々何もなければ課税所得300万円のAさんと、同700万円のBさんがいる。しかし、不幸なことに2人は大病を患い、100万円の医療費控除を受けることになった。2人のうち、どちらのほうがメリットが大きいだろうか。
前回で説明したように、所得税の税率は累進課税で7段階に区分される。計算の詳細は省くが、Aさんの本来の所得税は20万2500円。Bさんのそれは97万4000円だ。
医療費控除を受けたとき、Aさんの課税所得は「300万円-100万円=200万円」。所得税は図(左)のように累進課税により2段階に分けて計算する。課税所得195万円以下の税率5%と、330万円以下の税率10%に基づき、「195万円×5%+(200万円-195万円)×10%=10万2500円」が実際の所得税となる。本来の所得税である20万2500円に比べて、10万円の減額となった。
一方、Bさんの場合、「700万円-100万円=600万円」が課税所得になり、所得税は図(右)のように3段階に分けて算出する。「195万円×5%+(330万円-195万円)×10%+(600万円-330万円)×20%=77万2500円)が実際の所得税となる。