夫が、まさかのクソ発言
【小島】もうひとつ、次男が小学校高学年のとき、ほんとにほほえましいレベルなんですけど、ガールフレンドができたんです。で、それを次男が話してくれたときに夫が「あーあの子か。学年でいちばんかわいいよな、お前さすがだな」ってクソ発言を。
【太田】うわー(笑)。
【小島】ごめん、どこから話せばいいかなー? って呆れましたね。女性を見た目で品評して、一級品をゲットしたとはでかした! って褒めたんですからね。“有害な男らしさ”の最たるものを、この大事な時期に刷り込みやがって! と、2人を前に怒りまくりました(笑)。でも、夫はいまひとつ腑に落ちていない感じで。
【太田】(笑)。うーん、でも、多くの男性には「え、何がまずかった?」という感じで、それが「普通」な気がしますね。
偏見を指摘されて直す経験、子どものうちに
【小島】知性の問題と別に、たぶん弱さと向きあう勇気の問題があるんだと思います。成長の過程で、差別や偏見を指摘されて早めに軌道修正する経験がないと、大人になってから指摘されたとき異常に傷ついたり、自己正当化のために逆上したりする。
【太田】ありますね。全人格を否定されたかのような極端な反応をする。差別や偏見に基づく当該そのふるまいを変えればいいということだけなのに。
【小島】そうなると学べないんですよね。人間誰しも、偏見にとらわれて無意識に誰かを傷つけることがあるんだと成人する前に気づけば、そこから気をつけようと学習もできるんですが。その経験がないまま成長して、いきなり自分の偏見を指摘されると、なんだかすごい攻撃を受けたかのように感じてしまう。
【太田】ことに性にまつわる偏見の場合にそうですよね。なぜそんなにデリケートなのか……。でも小島さんは、そうしてパートナーとぶつかりながらも伝え続けていることは偉いなあと思います。
【小島】夫も少しずつ変わってきましたが、あまりにも進捗が遅いので最近はもうあきらめて、息子たちへの連鎖を断つことに注力してます。ほんとうは、夫自身から伝えてほしかったんですよね。自分が身につけてきた偏見や、しでかしてしまった愚行を開示して、息子たちがそうならないよう彼自身の口から伝えてほしかった。
【太田】その壁を越えるのはすごく難しいんでしょうね。
【小島】だから、そういう弱い父親の姿から学びなさい、と息子たちには伝えるつもりです。