大人が忘れている「柔らかさ」を呼び覚ましてくれた

水月昭道『子どもの道くさ』(東信堂)

子どものときに好きだった狭い通路。いつもおじいちゃんが花の水やりをしていた角の一軒家。友だちと喧嘩して、この世の終わりみたいな気持ちになった夕方――。

水月さんの本が多くの人の琴線に触れたのは、かつて好きだったことや、子どものときに感じた言葉にできない感情を呼び覚ましてくれたからではないだろうか。それこそ、わたしたちが忘れていた「柔らかさ」のように思える。

「よく考えてみると、子どもの時は子どもなりにいっぱい悩みがあったはずなんです。僕は大人になったら賢くなるし、知恵も体力もついているだろうから、今の自分の悩みは全部消えてなくなるんだって本気で思っていました。でも大人になってからのほうが悩みは深まっています。不思議ですねえ(笑)。だから子どもの時の自分にもし出会ったら、今のうちにたっぷり道くさをして、柔らかい体と心を作って、余裕を持った大人になりましょうって教えてあげたいですね」

水月昭道(みづき・しょうどう)
浄土真宗本願寺派僧侶、立命館大学客員教授
1967年福岡県生まれ。バイク便ライダーを経て長崎で建築学を学ぶ。九州大学大学院博士課程修了。博士(人間環境学 九州大学)。子どもの発達を支える地域環境デザインなどを研究。父が病気で倒れ京都から郷里へ戻り実家のお寺を継ぐ。著書に『子どもの道くさ』(東信堂)、『高学歴ワーキングプア』(光文社新書)、『お寺さん崩壊』(新潮新書)他。
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