「掛け算」で誰でもユニークな存在になれる

ユニークネスは生まれ持った才能ではなく、誰もが自発的に作ることができます。そのカギは、「掛け算」です。

ミドル世代のビジネスパーソンなら、これまでのキャリアで身についたスキルや知識が何かしらあるでしょう。そこに、もともと自分が好きなものを掛け合わせる。それにより、ユニークネスを作り出せます。

ヨーロッパの主要都市には、文化施設や劇場などの芸術分野を専門とするコンサルティング会社があります。

そこで活躍するコンサルタントは、経営学や統計学の知識を持つ一方で、芸術への造詣が深い人たちです。あるオーケストラの経営について相談を受けると、まず演奏を聴かせてもらい、「金管楽器が弱いですね」「レパートリーがロマン派に偏りすぎているので、人気のある古典派を増やしたほうがいい」といったアドバイスができる。コンサルタントとしての経営戦略の知識と、もともと好きな音楽の知識を掛け合わせているのです。

興味深いのは、その人たちがコンサルタントとして一流かというと、そうでもないこと。では音楽プロデューサーやキュレーターとして一流かというと、やはりそうでもない。ところが、「経営戦略もわかって、芸術もわかる」という人材になると、世界中でごく限られた人しかいないので、そこに希少性の高いユニークネスが生まれます。

ある仕事で100人に1人のレベルだと、100万人いる市場なら、自分と同レベルの競争相手が1万人いることになる。でも、もう一つ別の「100人に1人」を掛け算すれば、「1万人に1人」の存在になれます。すると100万人のうち、同レベルは100人しかいない。これなら十分戦えるし、安定して食べていけるはずです。

これからはとことんわがままを追求しよう

大事なのは、自分のキャリアやパーソナリティを振り返り、色々な掛け算を試してみること。その過程でセレンディピティが起こり、新たな仕事につながっていくからです。

THE21編集部『論客16人が予測する コロナ後の新ビジネスチャンス』(PHP研究所)

私自身も、片方にコンサルティングの仕事で身についたマーケティングや経営戦略の職能があり、もう片方にもともと好きなアートや人文科学の領域があって、「これを掛け合わせて何かできないか」と考えたことが、今のキャリアを拓く契機になりました。

そして、自分の考えをブログやレポートで発信するうちに、編集者の目に留まって本を出したり、様々な場所にスピーカーとして呼んでもらったりする機会が増え、今では本業のコンサルティングと副業の比率が逆転するまでになりました。

これからの「ノーノーマル」の時代には、ぜひ自分の好きなことや自分らしい生き方を優先していただきたい。かのヘルマン・ヘッセは、『わがままこそ最高の美徳』(草思社)というエッセーを書いています。わがままな人が、世の中が普通と思っていることに文句を言うからこそ、社会は進化するという内容です。

皆さんも、「自分はどう生きたいのか」を、とことんわがままに追求してください。

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