自分らしい生き方をデザインする力が必要

働き方が多様になれば、暮らし方にもバリエーションが生まれます。これまで、都心の会社に通うため、住まいを都会に構えていた人が、「2週間に一度しか会社へ行かないなら、田舎に引っ越して、出社する日だけ都心のビジネスホテルに泊まればいい」という選択をするようにもなります。

どんな働き方をして、どの場所に住み、どのような生き方をしたいのか。それをオプションフリーで選べるようになるのが、これからの大きな変化です。

ただし、そのためには、自分らしい生き方を主体的にデザインする力が求められます。デザイン力が高い人は、好きな場所や環境で、好きなことをしながら、人生の幸福度を高めていけるでしょう。

一方、これまで「普通」という基準に頼ってきた人は、急に「自分の好きなように決めていい」と言われても、人生をどうデザインしていいのかわからない。その人のデザイン力によって、幸福度の格差が広がる可能性があります。

ライフプランニング
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価値観の多様化はビジネスチャンス

人々がそれぞれ好きなことを追求する時代になれば、物事の価値にも転換が生じます。これまでは、皆が同じモノを欲しがる時代でした。ビジネスでも、皆が欲しがって、かつ、希少性の高いモノを提供すれば、たいていうまくいきました。

典型的なのが三菱地所です。丸の内のオフィスという希少性が高いモノを、数多くの企業が欲しがるため、成長してきたのです。

しかし、人によって欲しいモノが異なる時代になれば、価値の構造が変わり、そこに新たなビジネスチャンスが生まれます。

例えば、東京の会社に勤めながら地方で暮らしたい人が増えれば、様々な場所に住宅の需要が生まれます。

こうしたライフスタイルを選択する人は、その土地にすでにある中古住宅を買えば満足するわけではありません。これまで都心で暮らしてきた人たちの好みを反映した住宅が求められます。

住空間だけでなく、買い物を楽しむ場所も近くに欲しいし、子供が通う学校や週末に家族で遊びに行けるスポットも必要です。

その土地の魅力はもちろん、周辺環境も含めて、人々は「自分はここが好き」と判断します。

今後は各地域で、そこに暮らす人の好みに合う価値を提供するための開発競争が進むのではないかと思います。