3. 「本物の食品は安全、日持ちする」も間違い

これもよくいますね。「添加物など使っていない本物の食品は安全。とくに発酵食品はすばらしい。味噌とか醤油とか納豆とか、期限なんて気にする必要はない……」。

いやはや。こういうのも科学的とは言えません。たとえばチーズ。一般的には賞味期限が付けられますが、一部のナチュラルチーズの中には消費期限が表示されるものがあります。リスクの懸念があるからです。しかも、チーズの本場で「本物中の本物」とみなされる種類です。

チーズは大別してナチュラルチーズとプロセスチーズに分けられます。ナチュラルチーズは、乳を酵素などで凝固させ、熟成させるなどしたもの。プロセスチーズは、ナチュラルチーズを加熱して溶かし再成形したもので、通常は乳化剤、安定剤などの添加物が入っています。

一般的なナチュラルチーズは加熱殺菌した乳を用いリステリア菌の増殖を抑制しているため大丈夫。ところが、ヨーロッパでは、伝統製法として加熱殺菌していない乳を用い、添加物等を使わないチーズも作られています。チーズ発酵の工程では、原料乳を加熱殺菌していなくても、多くの菌は強い塩分により死にます。しかし、リステリア菌は食塩濃度が12%程度、4℃以下の低温でも生存増殖できるため、生き残ってしまいます。その結果、食中毒につながる場合があるのです。

こうしたことから、食品表示基準Q&A(加工‐180)で、リステリア菌の増殖を抑制していないものは「消費期限」を表示するように、とルール化されています。ところが、未殺菌乳から作られるヨーロッパ伝統のチーズは、日本ではデパートやチーズ専門店等で本物中の本物として高価な値札を付けて並んでいます。皮肉な話です。

妊婦や高齢者は要注意

リステリア菌の食中毒は日本では一般的ではありませんが、内閣府食品安全委員会は、年間200人程度の患者が発生していると推測しています。ナチュラルチーズのほか、生ハム、スモークサーモン等が原因となります。

とくに妊婦は要注意。リステリア菌が胎児に移行して流産などを招きます。高齢者も重症化しやすい、とされています。「本物=安全」ではありません。妊婦や高齢者がチーズを食べるなら、缶入りでしっかり加熱されたナチュラルチーズやプロセスチーズを。賞味期限を確認して期限内に食べましょう。

厚生労働省資料