まだ食べられるのに捨ててしまう「食品ロス」はなぜ起こるのか。科学ジャーナリストの松永和紀氏は「賞味期限を過ぎたらすぐに品質が変化すると誤解されている。食品ロスを減らすにはそうした消費者心理を変えていく必要がある」という――。
食品廃棄物
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1.「新しければ安全性が高い、品質が高い」は間違い

日本人は鮮度志向が高いようで、なるべく新しいものを買おうとします。日付の新しい牛乳やハムを棚の奥から引っ張り出してきてかごに入れる買い物客……。スーパーマーケットで頻繁に見られる光景です。

でも、賞味期限が付いているものは、「『賞味期限を過ぎたら食べないほうがいい』が間違いである根本的な理由」で説明してきたように、わずかな日数で大きく品質が変化するわけではありません。日付が古いものが売れ残り廃棄されるのはもったいない。生活協同組合「コープこうべ」は、賞味期限が5日後の豆腐と1日後の豆腐の味比べを実施して味がほとんど変わらないことなどを組合員自身が確認し、棚の手前の商品から食べることを呼びかける「てまえどり」キャンペーンを行っています。

コープこうべの「てまえどり」呼びかけの様子
写真=コープこうべ提供
コープこうべの「てまえどり」呼びかけの様子

食品の種類によっては、この鮮度志向が逆の現象を生み出す場合もあります。たとえば、観光地で売られる菓子。半年先の賞味期限が付けられたまんじゅうより3カ月後のまんじゅうの方がよく売れる、という場合も少なくありません。

技術を駆使すれば、まんじゅうは半年もち、おいしく食べられます。保存料を使わなくても、工場を衛生的に管理して腐敗やかびの原因となる微生物を防いで製造し、製品にアルコール蒸散剤を同封してどうしても入り込むカビの増殖を抑え、さらに脱酸素剤も入れて酸素を抜き酸化を抑える、というふうに、さまざまな方策があります。